お客様との約束を守る

〜時代の変化に対応できる会社〜

株式会社 島本食品 代表取締役 波多江 正剛 氏(西支部)

株式会社 島本食品
代表取締役 波多江 正剛 氏(西支部)

ブランディング強化にあたり、自社の『在り方』をじっくりと時間をかけて社員とともに考えました。

M&Aをする

 取材の冒頭、(株)島本食品の代表取締役社長の波多江正剛さんが会社の沿革を説明してくれました。昭和45年新幹線が博多まで開通し、博多において支店文化が栄え、お土産として辛子明太子の人気が出てきました。その中で島本食品は国産のスケトウダラの卵(卵巣)で辛くない明太子にこだわりました。卵のおいしさを味わっていただきたいという気持ちからです。

 「私の名前は波多江ですが、会社名は島本食品と言います。そもそもは、島本さんという方が経営されていらっしゃいました。取引先で、私の父親が経営している(株)はたえが平成9年にM&Aをしたのです」。しかし、1年後、父親は急逝し母親が社長を継ぎました。

社員との軋轢

 まず、平成9年、はたえグループの一社を任されました。自分なりに尽力して経営に努めましたが、結果的に赤字を出してしまい、その会社を清算することになりました。「若気の至り」と波多江さんは反省したのでした。本体((株)はたえ)で母親を手伝うかたわら、九州大学ビジネススクールに通い経営を学び直します。また同友会にもこの時期に入会しています。

 やがて平成17年、(株)島本食品に赴任します。肩書は企画室長で、机を一つ与えられました。「社長の息子が帰ってきた」「グループ会社を清算している」……。表立っては言わないものの、不穏な雰囲気がありました。波多江さんも「社員はこうあるべき、こう働くべき」という先入観があり、社員との間に軋轢が生じていたと言います。

 「売上もジリ貧になってきました」。業界が急成長する中、競合相手が増え、また原材料も高騰していきました。波多江さんは焦りを覚えてきました。

経営指針書の作成

 そんな悩める中、同友会で勧められるままに『あすなろ塾』『経営指針作成セミナー』に参加しました。

 その際、策定した経営理念は次の通りです。

 敢えて『歓び』という文字を使っているのは、人をよろこばせるという意味合いがあるからです。現状の課題は「場所がない、時間がない、機械がない」という言い訳を、出来ない理由にしていたことです。そこで、できることを確実に行っていこうと決めました。これを「有るを尽くす」という言葉で表してくれました。

 経営指針書を作成したからと言って、すぐに効果が出るものではありません。しかし進むべき方向性を成文化し、浸透させることで徐々によい方向に向かっていくのを実感しました。SWOT分析で、改めて自社の強みを再認識していきました。

 同社では、明太子を製造し自社で販売していきます。つまり卸はしていません。通信販売と4店(博多駅前店・博多阪急店・新宮店・工場直販)で販売しています。そこでランチェスター戦略にのっとり、エリアを絞り定期的にポスティングを開始していきました。「ターゲットにしている年齢層には紙媒体は強いですね。DMやチラシで電話注文・インターネット注文へ誘導していきます。また来店していただくお客様にはご不便・ご不満がないような対応に心がけました」。

 売上は回復していきました。

社長に就任、そしてブランディング強化

 平成24年波多江さんは社長に就任します。そこで一大決心をするのでした。『ブランディング強化』です。

 経営理念も刷新しました。『私たちは博多の食文化を守りながら、お客様の歓びの中で発展・成長する会社を作ります』。

 企業が生き残るためには、時代の変化に合わせて変えていかなければなりません。

 まず、会社の『在り方』を考えていきました。社員全員と面談や定期会議を開きました。「島本って何だろう」「どういう会社になりたいのだろう」。

 そして島本五つの誓いを策定しました。

  1. 国産の素材を大切にし、安心安全なものづくりを誓います。
  2. 口コミだけの直接販売で良品美味を適正価格でお届けする事を誓います。
  3. 素材を生かした、美味しさ追求のためには手間を惜しまないことを誓います。
  4. お客様のお声に耳を傾け改善し続けることを誓います。
  5. 「感動と笑顔を伝える会社」であるよう努力し続けることを誓います。

 初めは社員も戸惑いを見せていました。コンセプトが固まり、それがデザインに具体化してくるころから思いが加速していきました。

 ロゴ、パッケージ、店舗、ホームページが刷新されていきました。

 ロゴは明太子で3つの心をイメージしました。贈る側の心、贈られる側の心、作り手の心が表されています。

ところが売上激減

 さて3年ほどかけてブランディング強化し、いざフタを開けてみると売上が激減しました。「おそらく慣れ親しんだロゴマークがなくなり、島本は倒産したの?和菓子店になったの?などお客様が一時的に戸惑ったのだと思います」と語ります。
 売上は当初減少しましたが、1年ほどすると、徐々にお客様も戻ってきていただき、売上も回復傾向に入ることができました。また、ブランディングを変えることで、新しいお客様も少しずつ増えてきて、なんとか業績も回復傾向になってきました。

新卒採用に挑戦

 波多江さんは、企業には新しい風(新卒採用)が必要だと考えています。担当者に任せて同友会の共同求人に参加し挑戦しました。結果的には採用には至りませんでした。

 「担当者が残念に思っていると思います。なぜ、採用に至らなかったのか。いい経験になり、気づきがあったことでしょう」。

今回の取り組みで社内整備が進みました。社内の制度にももう一度目を向けることができました。「若い人が入りたくなる会社とは何かを考えたと思います」。権限委譲を受け、自分で責任を持って仕事をすることだと波多江さんは考えます。

長期ビジョン

 波多江さんはかつて韓国に工場を作り生産拠点にしようとしたことがありました。その際には様々な理由から撤退を余儀なくされましたが、この経験が販路開拓や新製品開発(めんたいマヨネーズなど)の礎になっています。今後は福岡を拠点にアジアを始め海外市場で展開を図る計画です。

 「私たちが生き延びるためにやることは、お客様との約束(五つの誓い)を守ることです。変えたことも多いですが、おいしさ、新鮮さは変えずにいます。このお客様との約束をこれからも守っていきます」。

 波多江さんの考える自立型企業についてお伺いしました。

 「自立型企業という実体はないと思うんですね。社員一人一人が心の中に自立した精神がある。それぞれが幸せになるために努力していく。その集合体が自立型企業なんじゃないでしょうか」。

 「もう一つ。おいしい明太子は?」と聞くと「それは出来立てでしょうね」と笑顔で締めていただきました。取材協力ありがとうございます。

株式会社 島本食品

創業 1976年
住所 糟屋郡新宮町夜臼2-9-1
電話092-963-3333
従業員数正社員14名 パート30名
URLhttps://www.simamoto.co.jp/
事業概要 辛子明太子の製造販売「口コミ」だけの通信販売で三十年お客様と共にやってます

取材/広報部 
文章/菅原 弘(東支部)
写真/富谷正弘(玄海支部)

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