『もったいない』を活かす

~あなたは会社とどう関わりますか?~

北九州商店株式会社 代表取締役 益吉 勇自 氏(ひびき支部)

北九州商店株式会社
代表取締役 益吉 勇自 氏(ひびき支部)

事業が拡大していく中で、組織経営を同友会で学ぶ益吉勇自さん。経営課題も見えてきました。

会社概要

 グループ企業の(株)コローレにお伺いすると、ちょうどマルシェの準備をしているスタッフのみなさんに笑顔で迎えていただきました。

 「創業20周年を迎えました」と話すのは北九州商店(株)代表取締役の益吉勇自さんです。さっそく、会社概要をお伺いしました。「北九州商店の事業は次の3本柱です」。

  • リサイクルショップ
  • 障がい者福祉サービス
  • 老人ホーム紹介

一見、関連のないように思える事業に思えます。まずは益吉さんの生い立ちをお聞きしました。

リサイクルショップを始める

 益吉さんは北九州市に生まれ、地元の大学を卒業します。城山三郎著『価格破壊』(流通業界のカリスマ・中内功氏をモデルにしたと言われる)に魅せられ、商売をしたいと考えてコンビニ会社に就職します。会社は順調に業績を伸ばしていましたが、バブルが弾けた余波はこの業界にも及び、業務は過酷さを増していきました。

 あるリサイクルショップのフランチャイズ出店は元手が不要との情報を得て、会社を退職し独立を図ります。2003年、八幡南店として創業しました。

 リサイクルショップは、お客様が使わなくなったものを捨てるのではなく何度も使ったり(リユース)、資源に戻して製品にしたり(リサイクル)して販売する仕事です。引き取った際も無駄なゴミにしない(リデュース)ので、時代のニーズにかなっていると思いました。

 トラックでの出張、引き取りが強みでした。地域に支持され店舗も増やしていきました。業績が伸びる中、人手が足りなくなっていきました。ちょうどその時にハローワークの担当者が訪問してきて、『障がい者の雇用』を提案されました。渡りに船とばかりに、益吉さんは障がい者の雇用を決断しました。2005年のことです。

 2007年からフランチャイズから抜けて独立し、『リサイクルトレード』を立ち上げました。さらに法人化して『北九州商店(株)』を設立します。「商店というのは人が集う場所でありぜひ屋号に付けたいと考えていました。生まれ育った北九州と併せた名前です」。2014年には家電レンタル、2017年にはキャンピングカーレンタルも始めました。

障がい者福祉事業

 売上が順調に推移して、障がい者スタッフも増えていきました(現在40名ほどが働いています)。障がい者受入れのノウハウも確立していない中で、現場のスタッフの疲弊する様子が伺えました。そこで障がい者を一堂に集めることにしました。登記上、別法人にしなければならないので、中間市に就労継続支援A/B型(多機能)である障がい者福祉サービス施設、『(株)コローレ(色・色彩という意味)』を設立しました。従来通りのリサイクル事業に加え、農耕作業や毎週水曜日にはマルシェを開催しています。

 障がい者に対する考え方として根底にあるのは、過保護に対応するのではなく本人が働きたいか、働く意思があるのかということを重視していることです。

コローレマルシェ

老人ホーム紹介

 例えば4人家族のお客様がいたとします。子どもたちが巣立っていき配偶者と死に別れて一人になると施設入居を考えるようになります。そこへ同社のリサイクル部門に連絡がきます。荷物を片付けるにあたり、施設へ持って行けない思い出の品がたくさんあることを知ります。事前にわかっていれば、アルバムのデジタル化や家具・着物のリメイクなど様々な提案ができると考えました。そこでご自宅の整理からご本人に合った施設の紹介のお手伝いができる『紹介センター』を立ち上げました。日頃から地域に根差した活動をしているため、情報はよく入ってきます。単に施設の間取りや費用等を紹介するハードウェアだけでなく、施設のサービス内容や雰囲気等その人らしく生活ができる情報をお伝えするソフトウェアにも及びます。「あそこは娯楽ルームがあり、今トランプが盛んですよ」「だいたい〇〇歳代が多いですね」など客観的な立場で情報提供しています。地元病院からの問い合わせが多いのですが、時には提携していない施設の紹介もあります。「何よりミスマッチしないことが一番です」と語る益吉さんです。

益吉さん

グループホーム開設

 様々な事情を抱え働いている障がい者にとって、仕事を続けるにあたり一番の心配ごとは、住まいの確保です。そこで益吉さんはスタッフに安心して働いてもらおうとグループホーム『ポルト(港という意味)』を建てました。これで安心して、生涯働くことができます。現在では3棟になっています。

 「いずれの事業もお客様から『ありがとう』と言ってもらえる仕事です」と益吉さんは笑顔で話します。

同友会に入会

 「私の妻の妹の夫が紹介者でして……」と、同友会との関わりを話し始めてくれました。紹介者の方は益吉さんの事業規模が大きくなるのを見ていて「組織経営を学ぶのにいい会があるよ」と奨めてくれました。

 入会してさっそく経営指針作成セミナーを受講しました。もともと似たような計画書は持っていたのですが見直すことにしました。「プレーイングマネージャーだったので、まず3日間会社を空けるのが大変でした」と語ります。何とかやりくりして参加した2泊3日セミナーで、カルチャーショックを受けました。「あの空気感がすごかったですね。3日間、唐津のホテルに缶詰め状態でしたが、みんなが夜を徹して自社について考えていました。仲間の会員さんも親身になって話を聞いてくれたのには頭が下がります」。

 改めて練り上げた経営理念は次の通りです。

 地域の『もったいないを活かす』にお応えすることで私たちは豊かで幸せを実感し持続可能な社会づくりに貢献します。

 『もったいないを活かす』というのは『モノ』だけではない『ヒト』にも当てはまると言います。障がい者であっても高齢者であっても働きたいのであれば、生涯働く仕事はあります。雇用を創出し社会貢献できています。またそうして働いている人は社会ともつながりができて生き生きしていると益吉さんは話します。

課題とビジョン

 同友会で学びを深め事業に落とし込んでいく中で課題が見えてきました。コミュニケーションが十分に図れてないため、人が育っていないことです。人に任せきれない、権限移譲をさせられていないこと、つまりNo.2を育成するのが急務であることが挙げられます。

 また、2025年ビジョンを策定しました。スタッフに「あなたが会社とどう関わりたいかを考えてください」と呼びかけます。ビジョン達成のために事業規模も一つ上を目指しています。そして一人ひとりが得意分野や好きなことを自分勝手ではなく、生涯続ける『わがままな仕事』として、一緒につくっていきたいと思っています。

支部長として

 さて益吉さんは2023年度のひびき支部長予定者です。その意気込みをお聞きしました。「せっかくいただいたチャンスなので、やる気スイッチを入れて、しっかりやりたいと思います。会員さんが支部とどう関われるかを呼び掛けていきたいと考えています。会社の取り組みと同じですね」。

自立できるように

 取材を通して、それぞれの事業の関連性が明らかになりました。理念という幹に事業が枝葉となって活性化していました。

 取材の最後に益吉さんが考える自立型企業についてお伺いしました。

 「関わっているメンバーが、本当に自立できるように取り組んでいる会社だと思います。自立というのは、主体的に考え行動することもそうですが、指示されたことをしっかりやるというのも『あり』だと思います」と締めていただきました。

 取材協力ありがとうございます。

北九州商店株式会社

創業 2003年2月
住所 中間市中央2-13-23
電話093-244-8866
従業員数48名(うちパート37名)
事業概要 リサイクルショップの運営、一般廃棄物収集運搬業、障がい福祉サービス事業

取  材 広報部
文章担当 菅原 弘(東支部)
写  真 富谷正弘(玄海支部)

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