温かみのある第2のおうちになる

~スポンジのように素直に学びを吸収し実践する~

株式会社ChouChou(シュシュ)代表取締役  阿部 弘美 氏(南支部)
株式会社ChouChou(シュシュ)代表取締役  阿部 弘美 氏(南支部)

株式会社ChouChou(シュシュ)
代表取締役  阿部 弘美 氏(南支部)

今回の取材は4つの保育園を展開する(株)Chou Chouの阿部弘美さんです。
宗像市にある企業主導型保育園カレン保育園くりえいとにお伺いしました。
天気も良く、ちょうど園児たちはプチ遠足に出かけていました。

学生時代はフィギュアスケーター

 阿部弘美さんは糟屋郡新宮町で生まれ、小さいころからコーチに付いてフィギュアスケートを始めました。九州産業大学アイスホッケー部・フィギュア部門に所属してインカレや国体に出場するほどの実力でした。卒業してからは、パピオアイスアリーナなどで、インストラクターやアイスショーなどショースケーターの道を歩みました。

 結婚後、ご主人から「保育園の仕事がしたい」との提案があり、阿部さんも乗り出すのでした。

 2013(平成24)年に古賀市で無認可保育園を開設(現在は新宮町に移転)しました。無認可(認可外)保育園というのは国の認可基準を満たしていないというだけで、それぞれの園独自の個性を出しやすいという特徴があります。

 開設当初は順調にいきませんでした。園児が少なくても拘束時間が変わるわけではなく、アスリートで培った気合と根性で朝から晩まで切り盛りしていくのでした。

宗像市にある「カレン保育園くりえいと」
宗像市にある「カレン保育園くりえいと」

シフトが出来上がる

 2年目に入ると、かつての同級生がスタッフとして入社してくれました。現在では阿部さんの右腕として支えています。彼女の子どもが通った保育園をお手本としてイベントやカリキュラムに取り組んでいきました。

 やがて保育士の資格を持つママ友が働きたいという話が出てきました。都合のいい時間で働いてもらうようにし、子連れ出勤をOKにしました。働きやすさが評判となり輪が広がっていきます。「実際にほとんどが子連れ出勤経験者です」。やがてシフトが組めるようになりました。「保育園は保護者の方々が安心して働けるように子どもたちをお預かりするところですが、先生たちにも安心して働いてもらいたいと思っています。働く母親を支援するという形が確立していきました」

 2016(平成28)年、待機児童対策で内閣府が主体となって企業に属する従業員の子どもを対象とした企業主導型保育園が制定されました。同社も3園開設していきました。現在、4園で67名のスタッフ(社員は5名)の大所帯となっています。「スタッフが働きやすい環境をつくるのが私の仕事です」と阿部さんは話します。

フィギュアと経営の共通点

 フィギュアスケートと経営の共通点という興味深いお話を聞きました。

 競技にはショートプログラムとフリープログラムがあります。その中で、ジャンプ、ステップ、スピンなどを盛り込んでいきます。練習では分解してそれぞれをスキルアップしていき、2週間前に総合的に完成させていくそうです。

 「目標から逆算して取り組むというのは経営と共通していると思います。準備をして取り組めばおのずと結果はついてくるという確信があったので、創業してから厳しい場面を迎えても『やめる』という選択肢はありませんでした」

 また、コーチからは、「アスリートは身体的素質と性格的素質が必要だ」と言われました。前者は体力や運動神経を指します。後者は『素直さ』のことで、専門家のアドバイスされたことを素直に聞き、スポンジのように吸収し実践していくことです。これは現在でも阿部さんの信条となっています。

 他人・他社と比べるのではなく、『ライバルは去年の自分』と言い聞かせ、日々精進しています。「今だったらもっと違った言葉でスタッフと向き合えただろうな」と反省するのは、阿部流失敗学でした。

同友会に入会

 ある時、「同友会の南支部の例会で保育園の仕事をしている方の報告があるそうですよ」と、声をかけられました(実はその方もゲストで、入会はしていませんでした)。阿部さんは初めて参加してみましたが「立派な経営者さんばかりで、自分には場違いだな」と感じたそうです。しばらくして、(断りをかねて)参加してみたところ、女性部会があり大勢の女性経営者が参加していることが分かり、力強く感じて入会を決断しました。

 南支部では、すぐに副ブロック長という『役』に就きました。知り合いがいない阿部さんにとっては、役職があるといろいろな経営者と知り合いになれる『役得』を前向きに捉え、積極的に参加するようになりました。

 福岡地区の例会づくりを担当し、『昼例会』を企画・開催しました。夜に参加できない女性経営者などから好評を得ました。

経営指針書作成

 入会後すぐに『あすなろ塾』と『経営指針作成セミナー』を受講しました。

 理念・計画・方針を策定する中で、志柿明子さん((有)アサップ・ASAP動物病院/のおがた支部所属)と話をしていて、『気合と根性』で進めてきた会社経営について「スタッフはあなたとは違いますよ」と言われ、ハッとしました。それからは「自分の考えをスタッフに100%求めるのではなく、それぞれの人格を尊重した話をするように心掛けるようになりました」と言います。 経営方針は次のように策定しました。

『温かみのある第2のおうちになる』

 みなさまにお気に入りのヒト・モノ・コトを提供する保育園を目指しますとしています。社名のChouChou(シュシュ)とはフランス語で「お気に入り」を意味します。先生が子どもやママのお気に入りでありたい、保育園が先生や子どもたちのお気に入りでありたいという願いが込められています。

 少子高齢化を見据え『福祉』への展開も10年ビジョンに掲げています。

 自分の課題解決や考えていることが間違っていないか、今後どうすべきかを確認する目的で同友会の全国行事にも積極的に出かけています。

理念の浸透のために

 日頃からスタッフとのコミュニケーションを大切にする阿部さんですが、一つの方法として幹部にも同じ研修を受講してもらいます。同友会の共育委員会の研修(Zoom)を受講した後には、グループ討議をしました。「理念ってこんなに大事だったんですね」という言葉が出ました。その後、幹部たちはそれぞれ持ち場に戻り、スタッフに対して理念に即した具体的な方針や行動に落とし込んで伝えてくれました。

 今後の課題は、組織強化と言います。中間層が少ないことから、新卒採用も含め人材を増やし、教育することを考えています。

園の特徴的な活動

 保育園では、高齢者施設や障がいを持った方の施設を訪問しています。「子どもたちがおじいちゃんやおばあちゃんに抱っこしてもらうと、双方が喜ぶんですよ」。また親が働くところを見学に行ったり、近所の畑でおイモ掘り体験をしたりなど、地域に根付いたプログラムをしています。

 スタッフはスマホを斜め掛け(ポーチ)して写真を撮りホームページやSNSで発信しています。現在お子さんを預けている保護者の方、これから預けたいと考えている保護者の方、同園で働きたいと考えている方などから好評を得ています。

 こうした活動を通して地域愛を持ち、子どもも含めた若年層が増えることが自社のミッションであるとも捉えています。

健全な経営

 取材の最後に阿部さんの考える自立型企業についてお伺いしました。

 「うちで育った子どもたちが、世の中に出て活躍してほしい、地域に貢献してほしいと考えています。自立型企業として、売上を伸ばして適正な利益を確保し、健全な経営を継続していく会社を目指しています」。同友会の学びを素直に吸収し、実践していく阿部さんです。

 取材協力ありがとうございます。

株式会社ChouChou

創業 2013年10月
住所 福岡市東区名島4-32-15
電話092-710-8488
従業員数67名(うちパート・アルバイト62名)
URLhttps://chouchouinc.com
事業概要 保育園の運営

取  材 広報部
文章担当 菅原 弘(東支部)
写  真 富谷正弘(玄海支部)

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