逆境を超えて築く100%黒字経営~中央支部6月例会レポート~

2026年6月17日
中央支部の6月例会が、Aqua博多にて開催されました。当日の様子とご報告いたします。

■当日のテーマと報告者について
今回の報告テーマは「逆境を超えて築く100%黒字経営〜コロナ期の経営実践と同友会の学びが導いた持続的成長〜」でした。コロナ禍をはじめ、物価高騰、人材不足、働き方の変化など、経営環境が大きく変化し続ける中、経営者は何を学び、どのように実践していくべきなのか。
この問いに対して、報告者である株式会社九州トラベルサービスの東和範氏が、創業から27年間の歩みを振り返りながら、率直にお話しくださいました。

東氏は1973年に福岡大学法学部を卒業後、旅行会社に就職され、1999年に株式会社九州トラベルサービスを設立されました。設立と同時に福岡県中小企業家同友会にご入会され、中央支部長や福岡地区幹事長など、長年にわたり同友会活動の中心で活躍されてきた経営者です。創業の経緯、事業承継、専業化、赤字対応、組織づくり、人材育成と、これまでの経営の歩みを振り返りながら、厳しい環境の中で何を判断し、どのように会社を前に進めてきたのかを、ご自身の言葉で丁寧に語っていただきました。

株式会社九州トラベルサービスは、福岡市中央区天神に本社を構え、国内旅行から海外旅行まで幅広く手がける旅行会社です。設立から27年目を迎える今年、訪日外国人旅行者の回復や大阪・関西万博による交流の活性化など、ツーリズム産業全体が成長を取り戻す中にあっても、東氏の報告からは、平時の成長だけではなく、コロナ禍という未曽有の逆境をいかに乗り越えてきたかという経営者としての覚悟が伝わってきました。

経営理念に掲げる「お客様第一主義」を、人の移動が完全に止まった赤字という現実の中でどう実践し続けるのか。その葛藤と決断のプロセスこそが、今回の報告の核心だったように思います。

■東氏の経営哲学と心得
報告の中で特に印象的だったのは、「不況克服の心得10ヶ条」と題した内容でした。「現実を解釈する」「志と覚悟を確認する」「自然の理法に則した対処」「長期的視野に立って対応する」という4つの柱のもとに、10ヶ条が整理されています。

その第一条は「好況よし、不況またよし、と考える。地に居て乱を忘れず」という言葉です。好況であっても不況であっても、自社が置かれた現実をまず受け止め、地に足をつけて乱れないこと。逆境を否定せず、そこにある現実を解釈するところから経営は始まる、という姿勢が伝わってきました。

また「原点に返って志を堅持する」「不退転の覚悟で取り組む」「旧来の慣習、慣行、常識を打ち破る」といった条には、創業の志を何度でも確認し続けながらも、過去の成功体験にとらわれず変化を恐れない覚悟が込められています。さらに「人材育成に力を注ぐ」「打てば響く組織づくりを進める」「日頃からなすべきことをなしておく」という条からは、東氏が組織づくりや人材育成を長期的視野の中心に置き、平時の備えこそが逆境を乗り越える土台になると考えていることがうかがえました。

東氏はもう一つ、「今を生き抜くためには」というテーマで、人と人とのつながりについても語られました。

「今も昔も、同じことではないかと思います」という前置きのもと、「つながりとは、人に好かれること」「好かれるためには、明朗な心を見せること」「礼儀正しく見せること」「作法を正しく見せること」「感謝の心を見せること」「何時も、笑顔で気配り」「行動を早くする、面倒くさがらない」「良いと思ったことは、すぐ実行する」など、当たり前のようでありながら実践し続けることの難しい心得が、10項目にわたって示されました。最後の「人に好かれるためには、相手を好きになること」という言葉に、長年経営者として、そして旅行業という人と人をつなぐ仕事を通じて、人と向き合ってきた東氏の実感がにじんでいました。

報告の終盤では、滝口長太郎氏の詩「打つ手は無限」も紹介されました。「どんな苦しい場合でも、どんな辛い時でも、愚痴を言わない」「叱ったと泣き言を言わない」「何か方法はあるはずだ」「何故なら打つ手は常に無限であるからだ」という一節は、東氏自身がコロナ禍で旅行業という事業の存続そのものを脅かされながらも、決して諦めなかった経営姿勢そのものを表していたように思います。

■座長として感じたこと
座長としてまとめをさせていただく中で、私が最も重みを感じたのは、東氏が語られた「旅行業が蒸発した」という一言でした。コロナ禍において、人の移動そのものが止まり、旅行業という業態が文字通り需要を失った瞬間があったという事実です。これを自分自身の事業に投影したとき、正直、怖さを感じました。私たちの業界も、弊社が取り組む『士業向けのオフィス構築』、『生成AI支援』という事業も、社会の状況の変化や外的なことなどが要因となり、需要そのものが「蒸発」しない保証はどこにもありません。東氏の言葉は、その怖さを抽象論ではなく、実際に経験した経営者の言葉として突きつけてくれました。

その怖さと向き合いながら東氏の報告を聞いていて感じたのは、経営とは「マインドコントロール」、つまり自分が自分に勝たなければならない戦いなのだということです。外部環境がどれほど厳しくても、最後に自社を立て直せるかどうかは、経営者自身が自分の弱さや甘さ、諦めたくなる気持ちにどう向き合うかにかかっている。誰かが助けてくれるのを待つのではなく、まず自分自身の心を制御し、現実を解釈し直す力を持つこと。それは決して一度身につければ終わりというものではなく、日々繰り返し問い直し続けなければならない戦いなのだと思います。

東氏の「不況克服の心得10ヶ条」の第一条が「現実を解釈する」から始まっていたのも、まさにこの自分との戦いの出発点を示していたのだと、座長としてまとめながら改めて腑に落ちました。

東氏が紹介された「KDDS」の取り組みも、まさにその自分との戦いを日々支える具体的な指針なのだと受け止めました。理念を掲げるだけではなく、日々の行動として落とし込み、社員と共有していく。掲げた言葉を実際の現場でどう体現するか、そしてそれを社員一人ひとりに浸透させていくか。その積み重ねこそが、100%黒字経営という言葉の重みを支えているのだと感じました。経営理念や行動指針は多くの会社が掲げていますが、それを27年間、逆境の中でも一貫して実践し続けてきたという事実そのものに、重みがあります。掲げるだけでなく、続けること。そこに経営の本質があるのだと、改めて教えていただきました。

そして、東氏の報告を通じて何より感じたのは、その背中の厚みです。

27年間、数々の逆境を乗り越えてきた経営者の言葉には、理論や戦略以上に、生き様そのものが表れていました。一言一言に重みがあり、聞いていて素直に「カッチョいい」と感じる報告でした。

経営の心得や名言は数多くありますが、それを語る人がどれだけの逆境を実際にくぐり抜けてきたかによって、言葉の重さはまったく変わります。東氏の言葉には、その重さがありました。

同友会という場で、こうした先輩経営者の生き様に直接触れられることこそ、私たちが学び合う意義そのものなのだと、座長として改めて実感した一日でした。

逆境を否定せず受け止め、志を堅持し、人とのつながりを大切にしながら、自分自身に向き合い続ける。

東氏が示してくださったその姿勢は、業種を問わず、今を生きるすべての経営者にとって必聴の内容だったと思います。私自身も、お客様に向き合う仕事や生成AI支援という新しい事業に取り組む中で、東氏の言葉を改めて胸に刻みたいと感じました。今回の例会にご参加いただいた皆さま、そして報告者の東和範氏に、心より感謝申し上げます。

座長 佐々木善一

2026年6月18日

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