18年6月例会報告 新内一秋氏(福岡県中小企業家同友会の代表理事)

2018年6月21日に西鉄イン2階会議室において、6月中央支部例会が開催されました。
報告は、福岡県中小企業家同友会の代表理事でもある、株式会社筑紫工業 代表取締役 新内一秋さんに話していただきました。
 報告の題名は、「人を生かす経営と企業づくり」〜生き生きと働ける日本一の人生道場の実現を目指して〜でした。
 新内さんは那珂川町で、経営ビジョンを  「生き生きと働ける日本一の人生道場」の実現とし、
株式会社 筑紫工業を創業200年企業にすることを目指しながら、経営されています。
 しかし、これまでの経営は決して安定的なものではありませんでした。
 売上、最高益を記録した好業績から、リーマンショックにより一転、経営が崖っぷちに立たされました。
 その時の売上は、過去最高の時から2年間で1/3程度まで落ち込み、非常に経営に苦しんだそうです。
毎月キャッシュが消えていくという、非常に心身ともに疲弊する毎日であったそうです。
 できることは何でもしようと、不況期対策の補助金、家賃減額交渉、役員報酬、給与の減額のお願いなど、
いろいろと手を打ちました。しかし、これでは抜本的な解決にはなりません。
 どのようにすれば、この難局から脱出できるのかを考え、同友会での学びから、
全社一丸の経営再構築の体制を作ることが解決策だと、考えられました。
 そこで、緊急の全社員集会を開催し、現状の経営状況を説明し、再建計画を提示しました。この時、
事業継続の不安から退職者も出てきたとのことでした。
 また、社員との個人面談も開始し、一人一人と向き合い社員の話を聞きもしました。
 結果、希望退職者を募集し、4名が申し出してきたそうです。これは今でも自責の念が強いとのことでした。
 この後、全社員ミーティングでいろいろと売上向上のための議論を3回ほど重ねたそうです。
 その時出た社員たちからの結論が、外部環境のせいではなく、自分たちの仕事の質が低下したからではないかというものでした。
この時から、品質改善に取り組み、業績も回復していったそうです。
 新内氏は、この時に新たな気づきがあったと語っていました。
その気づきから、新たな経営姿勢として、毎年、経営指針書の意見をアンケートで集めて、集約・討議・回答をする形となっているとのことでした。
 その他、経営危機に瀕して得た教訓として、手形を持たない、二つの財布を持つ…通常の資金繰り用の財布に普通預金と当座預金を持ち、
もう一つの意金繰り以外のキャッシュを蓄積しておく、財布の普通預金を用意しておく、などの、資金管理の工夫もお話されていました。
 稲盛和夫氏の「相撲は土俵の真ん中でとれ」という言葉から、資金繰りに常に土俵の真ん中で管理できるようにしているとのことでした。
 私も仕事柄、事業不振の会社さんをどうすれば立ち直らせることができるのか、ということを考え、相談を受けることがあります。
この時、やはり社長が変わらないといけないと思っています。
 中小企業の業績のほとんどは、社長が正しい戦略を見つけだし、計画立案する戦略実力で決まります。
社員の実行する戦術の良し悪しは、ほとんど影響しません。
 しかし、社長が高い戦略実力を持って考えた戦略を実行するには、経営者だけではできません。社員さんたちの実行力も必要です。
 そのため、戦略を効果的に実行する組織を備えるために、経営者は組織が全社一丸となれるリーダーシップを図り、
戦略を実行するための教育と仕組みづくりをして行かなければならないと考えています。
 戦略がサイエンスから導き出される全社的な骨組みとすれば、実行力はその骨組みを動かす、
各社員のアートとしての知的機動力から生み出される筋肉だと考えています。
 両者が無ければ、経営はできないと思っています。
 それは、「人が最も大事。人がいれば何とかなる」というものでした。社員はきちんと意見を持っている。それを聴き、受け止めることだと気が付かれたそうです。
新内氏の報告は、まさにこの通りのことを実践された経営であるという、感想を最後は持ちました。
 (いちご会計事務所 足立 知弘)

 

2018年7月7日