2025年上半期受講生卒業式(実践報告会)
11月17日(月)久留米市東部・うきは市・朝倉市エリアを中心に活動する福岡同友会りょうちく支部にて、「経営AI支援勉強会」の最終回(反省会・事例発表会)が開催されました 1。
半年間にわたる勉強会を通じ、参加した経営者や士業の方々がどのようにAIを実務に導入し、生産性向上を実現したのか。その具体的な事例と、これからの中小企業に求められるDXの本質についてレポートします。

1. IT・AIの本質は「個人のエンパワーメント」
勉強会の冒頭、講師の柿元氏は、ITやDX、そしてAI活用の本質について改めて定義しました。それは「個人や小組織のエンパワーメント」です。
「コンピューターやデジタルの力を借りて、個人や小組織の能力を10点から30点だった能力を60点から80点に引き上げること。それがエンパワーメントであり、そのツールとしてAIを活用するのです」
この筑後地方の中小企業が直面する「人手不足」への対策としても、機械化・自動化に加え、AIによる業務効率化が不可欠であることが強調されました。特に、苦手な分野や初めて取り組む分野でAIを「叩き台」として使うことで、悩む時間を大幅に削減できるという点は、多くの経営者にとって重要な視点です。
2. 地元久留米・筑後の中小企業経営者によるAI活用「実践事例」
今回の卒業式では、実際にAIツール(ChatGPT、Gemini、NotebookLMなど)を業務に導入した参加者から、この間の自社での成果が共有されました。
① コンテンツ作成・デザイン(広報・販促)
ブログ作成や看板デザインのアイデア出しにChatGPTを活用。「専門外の分野でも、AIに10個ほど案を出させ、修正を繰り返すことで希望の形に近づけることができた」との報告がありました。
② 複雑な文書作成・申請業務(補助金・法務)
ある参加者は、補助金申請の文章作成にAIを活用し、非常に役に立ったと語りました。また、112年の歴史を持つ企業の年表作成において、自社の歴史と世の中の出来事をリンクさせる作業を一発で完了させた事例も紹介されました。
③ 士業における専門業務の効率化
弁護士や会計士などの専門職でも活用が進んでいます。
- 契約書・訴状作成: 個人情報を伏せた上で事案の概要を入力し、ドラフトを作成。リーガルチェックではリスク順に指摘をもらうことで、回答までの時間を1時間以内に短縮。
- 膨大な資料の要約: 600ページにも及ぶ消費者庁のガイドラインをNotebookLMに読み込ませ、必要な情報を抽出。
- スライド作成: AIアプリ「Gamma」を使用し、セミナー資料の叩き台を作成することで、PowerPointをゼロから作る手間を削減。
④ 経理・データ処理の自動化
NotebookLMを活用し、ネットバンキング未対応の通帳データを読み込ませて会計ソフト用のCSVに変換するという高度な活用事例も発表されました。従来の手入力作業を劇的に改善する手法として注目を集めました。
⑤ メンタルサポート・壁打ち
クレーム対応などのストレスがかかる業務において、AIを「相談役」として活用。「AIと壁打ちすることで、感情的にならずに冷静な対応策(フローチャートなど)を作成できた」という、AIのメンタルサポート的な側面も報告されました。
3. ツール使い分けのコツ:ChatGPT vs Gemini
参加者の多くが、目的に応じてAIツールを使い分けていることが分かりました。
- ChatGPT: 文章作成、アイデア出し、形式的な整え、人間味のある壁打ち相手として優秀。
- Gemini (Google): 検索機能と連動した情報収集、会計・税務などの専門的な内容の精度、Google Workspaceとの連携に強み。
- NotebookLM: 自社データや長文PDFを読み込ませて分析させる「クローズドな環境」での活用に最適(士業や機密情報を扱う業務向け)。
「形式面はChatGPT、内容面はGemini」といったハイブリッドな使い方が、皆さんのトレンドのようです 。

4. 筑後地域の中小企業の生産性向上へ向けて
ある筑後市の参加者は、Excel関数についてAIに質問することで、「これまで3日かかっていた毎月の資料作成が半日でできるようになった」と報告しました。これこそが、地方の中小企業における生産性向上のリアルな姿です。
講師の柿元氏は、「AIツールはまだ発展途上であり、3ヶ月後には機能が劇的に改善されていることもある。継続的な情報収集が重要」と締めくくりました。
久留米・うきは・朝倉エリアの中小企業経営者の皆様、まずは「苦手な業務」や「時間がかかっている定型業務」から、AIというパートナーを取り入れてみてはいかがでしょうか。
【AI活用のポイントまとめ】
- AI活用の目的: 個人の能力拡張(エンパワーメント)。
- AI活用のコツ: 0から1を作る「叩き台」作成をAIに任せる。
- AI活用の注意点: 機密情報は学習させない設定(オプトアウト)や、各種生成AI有料版の利用などのセキュアな環境を活用する。