「社員のために本当の社長になります!」
社員の声に気づかされた経営者のあり方と覚悟
株式会社琉球補聴器 代表取締役 森山 賢 氏
㈱琉球補聴器は森山さんの父である森山勝也氏が1987年に創業した補聴器の専門店。
東京にいた森山さんが帰郷したのは57歳の若さで他界された母親の死がきっかけとなる。
32歳だった。母親への親孝行のつもりで琉球補聴器に入社し、35歳で社長に就任した。
しかし、折り合いの悪い父親との葛藤は続く。創業以来、赤字を出したことのない業績も、
自分が社長に就任した後はどうしても5億の売上に届かない。
その度に業績が上がらないのは父親のせいと責任を転嫁してきた。
そんな自分が変わったのが8年前に開催した社員32名とのビジョン研修だった。
自分の夢をポストイットに書き出した。その数800枚。
次にカテゴリー分けがされた夢の阻害要因を出し合った。
その数700枚。阻害要因のなんと100枚が社長のことだった。この内容について、
直接社員から意見をもらうこととなった。
長く続く沈黙を破って女子社員が発言をした。それから、雪崩のように続く社長への
ダメ出し発言が森山さんの心臓に深く突き刺さった。
森山さんはその夜寝ることができなかった。
研修2日目。昨日の振り返りで、いの一番に森山さんが挙手をした。
「みんなの夢の実現を阻害していたのは自分だった。」と認め正座をして謝った。
とめどもなく溢れる涙。しかし、心はくやしさと惨めさに溢れ、
「いつか仕返しをしてやる。」と思っていた。
研修を終えて、もう一度振り返ってみた。みんなで書くことがなければ、
また社長に直言しなければ、何事もなく過ごしていたであろう。
冷静に考えるとみんな本気で琉球補聴器のことを考えてくれていると思った。
「性根が腐っていたのは自分」そう思った瞬間にパチンとスイッチが入った。
それからというもの父親への態度が180度転換した。
父親のルーツを探り、生き様に触れた。同友会にも参加するようになった。
7代目の共同求人委員長を引受け、新卒を採用し、入社式にはご両親をお招きし触れ合う。
「深い人間性、広い社会性、素直、前向き、コツコツと」理念の浸透とともに朝礼を通して、
夢の共有と社員の夢の実現を応援している。経常利益1000万円ごとに夢決定会議を行い、
実現させてあげたい夢を社員全員で決めるというユニークな制度だ。
それからというもの5億を突破するようになった。
今は父親に毎日はがきを出すようにしている。1000通を目標に書き続けるという。
記録 : 株式会社アビリティ・キュー 貞池龍彦