【りょうちく支部7月例会レポート】評価制度は「査定」じゃなく「働きがい」のためにある — 辻本さんの経営体験報告に学んだ、社員が納得する会社のつくり方

「評価制度」と聞いて、皆さんは何をイメージされるでしょうか。私は正直に言うと、”社員をランク付けして給料を決めるための仕組み”くらいにしか思っていませんでした。まだまだ会歴の浅い私にとって、今回の7月例会は、その先入観が根底からひっくり返された深い学びの時間となりました。ご報告いただいたのは、会計事務所を経営される辻本さん。ご自身の評価制度改定にまつわる長年の”試行錯誤”を、失敗も含めて赤裸々に共有してくださいました。


📌 例会概要

  • 開催回:りょうちく支部2026年度7月例会
  • 開催日時:2026年7月24日金曜日 18:30~21:00
  • 開催場所:北野生涯学習センター本館(住所:〒830-1113 福岡県久留米市北野町中273−1)
  • テーマ:人事評価制度 〜納得感のある報酬制度をどう作るか〜
  • 報告者:辻本様(会計事務所経営/福岡県中小企業家同友会会員福友和支部)
  • 形式:経営体験報告+グループ討論+質疑応答
  • 主催:(一社)福岡県中小企業家同友会 りょうちく支部

なぜ辻本さんは「評価制度」にこだわり続けるのか

報告の冒頭、辻本さんはこう語られました。

「働きがいを得るための条件は二つ。一つは”自分が何をやらなきゃいけないのか”が分かること。もう一つは”それをどれだけやったらどう報われるのか”が分かること。この二つが見える会社にしたかった。」

新人の私にとって、この言葉はとても腑に落ちるものでした。前職の記憶を辿ってみると、確かに「頑張ったのに評価されない」と感じたのは、決まって”何を期待されているのか分からないまま働いていた時”だったのです。

辻本さんは、社員が「一生懸命頑張ったのに、面談で”求めていたのはそれじゃない”と言われる」——その残念な経験をご自身も繰り返してきたと振り返られました。だからこそ、期待の明確化と報われ方の明確化を仕組みにしたい、と考えられたそうです。

そしてもう一つ印象的だったのは、辻本さんの「趣味は企業研究」というお話。日頃から良いと感じる会社を訪問したり資料を読み込んだりされているとのことで、「良い会社には必ず評価制度という仕組みがある」——この確信が、制度づくりの原動力になっていました。


何度も作り直された「評価制度」の物語

ここからが本題です。辻本さんの評価制度は、創業以来何度も作り直されてきました。以下、その歩みを私なりに整理してみます。

🔹 最初の挑戦 — 理想への共感から、外部の仕組みを導入

創業からまもない時期、辻本さんは外部の人事評価の仕組みを導入されました。「評価制度は査定ではなく成長のためのツール」という理念に強く共感してのスタートでした。

しかし——結果は「うまくいかなかった」。

辻本さんはご自身の言葉で、こう振り返られました。

「制度は良かった。でも、社員には”査定されてる制度”としか受け止められなかった。信頼されているキーマンに、これは自分たちのための制度なんだと最初に納得してもらう工程が抜けていた。」

「巻き込み不足」による失敗——これが最初の教訓でした。制度そのものの中身以上に、“導入プロセスで誰にどう理解してもらうか”が肝である、という気づきだったそうです。

🔹 次なる挑戦 — 分かりやすさを追求すると、また別の壁が

次に辻本さんが取り組まれたのは、よりシンプルで分かりやすい仕組みへの転換でした。分かりやすさは前回よりも改善されましたが、今度は別の課題が次々と浮かび上がってきます。

  • 立場や担当領域によって感じる不公平感
  • 数字で見えにくい業務(全体貢献・関係構築等)の扱い
  • 定量化が進むほどに強まる”個人主義への懸念”
  • 従来型の評価に慣れた社員からの戸惑い

辻本さんは正直に「1回もうやめようかと思うぐらい、きつい時期でした」と吐露されました。ここでの学びは、“みんなの意見を聞きながら作っても、立場が違えば見え方が違う”という当たり前で、けれど重い現実でした。

🔹 現在に至る発想の転換 — 「対話し続ける仕組み」へ

そして辻本さんがたどり着かれたのが、制度を”作って終わり”にせず、”対話の場そのものに変える“という発想でした。

象徴的なのが、社員からの疑問・要望・不満を必ず表に出し、経営者自らが回答して全社に共有していく仕組みです。蓄積された回答は現在数十件にのぼり、グループ討論でも参加者の方から「非常に参考になった」という声が上がっていました。

「想定してなかった意見が出てくる。会社としての考え方を、その都度全体に説明できる。これが本当に良かった。」

制度を”完成品”としてではなく、社員との対話を続けるためのプラットフォームとして運用する発想に、私は強く心を動かされました。

🔹 現行制度へ — 安心と成長を両立させるために

現在運用されている制度では、これまでの改定で見えてきた課題——「安定した生活設計」「次世代の育成」「会社ビジョンと個人の希望との整合」——に応える工夫が組み込まれています。

特に印象的だったのは以下の2点です。

  1. 一定期間の生活を守る”安心の土台”を制度に組み込む
     → 病気・育児・介護など、誰にでもあり得るライフイベントへの安心感を担保
  2. 昇格の条件に「後進の育成」を組み込む
     → 「育成こそ大事」というメッセージを、制度そのもので発信

いずれも、辻本さんが繰り返し語られた“働きがい”と”安心感”の両立という理念に、しっかりと接続されていました。


質疑応答から見えた、辻本さんの経営哲学

質疑応答の場で、ある会員の方から鋭い質問が飛びました。

「上司が新人のせいにする、みたいなことは起きないんですか?」

辻本さんの答えは明快でした。

「他責は厳禁。とはいえ他人は変えられない。だから上司には、まず”自分がやるべき働きかけをやったか”を問う。上司用の研修も必須で設定してます。評価制度だけでは解決できないから、上司教育・社風・採用と、”仕組みのセット”で解決するんです。」

もう一つ、私が個人的にハッとしたのは、参加者から出た「相互依存」というキーワードへの回答。

「自立した大人の集団でありたい。でも過度な個人主義は認めない。自分の強みを差し出し、弱みは他の強みを持つ人に依存する。それを”相互依存”と呼んでいます。」

一見矛盾しそうな「自立」と「依存」を、強み×強みの関係で統合する——この考え方は、経営だけでなく、人間関係全般に応用できる普遍的な知恵だと感じました。


座長まとめより:「納得感」を貫く覚悟

例会のクロージングで座長は、こうまとめられました。

「評価制度って、社員を管理するためじゃなくて、”自分の会社がどういう会社であるかを社員さんに知ってもらう”ためのものなんだと感じました。辻本さんが何度も作り変えてこられたのは、”社員に納得して船に乗ってもらいたい”という覚悟の表れです。」

まさに同友会が掲げる「よい会社をつくろう」「よい経営者になろう」の実践そのものだと、私は強く感じました。


私が持ち帰った3つの学び

最後に、新人である私が今日の例会から学び、明日から自分の経営に活かしたいと感じたことを3つ挙げます。

  1. 「完璧な制度はない」と認める勇気
     制度は作って終わりではなく、”少しでも良くなるならすぐ変える”。この姿勢こそが、社員の納得感を生む。
  2. キーマン(信頼される社員)を最初に巻き込む
     新しい仕組みを入れる時、全体会議で説明する前に、まず”社員同士の会話に登場する人”に理解してもらう。
  3. 仕組み単体では解決できない、と諦める
     評価制度は万能ではない。採用・教育・社風・上司力——仕組みは”セット”で機能するという視点を持つ。

同友会の学びは、こうして先輩経営者の”生々しい試行錯誤”に触れられる場だと、改めて実感しました。まだ入会して日の浅い私ですが、こうした場に身を置き続けることが、自分自身と、いずれ迎える仲間たちのためになる——そう確信した夜でした。


📢 次回例会のご案内・入会お問い合わせ

(一社)福岡県中小企業家同友会では、月々の例会・支部例会を通じて、経営者同士が実践から学び合う場を継続的に開催しています。

「よい会社をつくりたい」「よい経営者になりたい」——そんな想いをお持ちの経営者の方、ぜひ一度、例会にお越しください。オブザーバー参加も歓迎です。

📅 8月例会 開催概要

次回8月例会は、大刀洗町パートナー企業制度の担当者をお招きし、この制度が生まれた背景、企業への期待、そして今後の展開について直接担当者にお話しいただきます。
行政側のリアルな声を入口に、自社と地域のかかわり方を参加者皆で考える例会です。

ぜひこの機会にご参加ください!

  • テーマ: 【2026年度8月例会】地域と生きる経営 大刀洗町パートナー企業制度から考える、企業と地域の未来
  • 日 時: 2026年8月20日(木)  18:30~20:30
  • 場 所: 北野生涯学習センター「別館」
    (住所:久留米市北野町中久留米市北野町中3298番地2 会場TEL:0942-78-5939)
  • 参加費: 完全無料
  • 参加申込: 同友会会員の方は、参加申し込みはe.doyuから参加登録をお願いいたします。
    ※会員以外のゲストの方は、下記のURLリンク先から参加登録をお願いいたします。
    https://zenkoku.e-doyu.jp/s.event/showDetail.html?init&eid=978623&lid=978623_1


✨ りょうちく支部に参加することで得られる3つのメリット

1. 地域の経営者ネットワークが広がる

久留米市・うきは市で同じように経営課題に向き合う仲間との出会いが待っています。

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実際に会場では、普段なかなか話せない経営の悩みや想いなども共有できます。


🔍 (一社)福岡県中小企業家同友会とは?

中小企業家同友会は、中小企業の経営者が「良い会社をつくろう」「良い経営者になろう」「良い経営環境をつくろう」という3つの目的のもとに集う、全国組織の経営者団体です。

同友会活動の特徴

  • 経営者自身が学び、成長する場
  • 業種・規模を超えた異業種の中小企業経営者の交流
  • 実践的な経営課題の共有と解決
  • 地域経済の発展への貢献

りょうちく支部とは?

(一社)福岡県中小企業家同友会りょうちく支部は、上記の県の3つの目的のもとに集う、主に久留米市東部、うきは市、朝倉市、朝倉郡、大刀洗町、小郡市に事業所を置く、地域と共に歩む中小企業の経営者団体です。



2026年8月12日