令和7年12月、うきは市・朝倉市・久留米市中心の中小企業経営者たち自身で運営している(一社)福岡県中小企業家同友会りょうちく支部の12月例会に参加してきました。
この例会は、二又朋則さんが代表を務める「一般社団法人レガード」での『農福連携』に関する報告会でした。
二又さんはもともと植木・苗木の生産販売を行う「金華園」を経営されていますが、現在は福祉事業(就労継続支援B型事業所)「一般社団法人レガード」の運営も行っています。
報告の前半では、私たち経営者が意外と知らない「障害福祉の仕組み」や、現場でどのように仕事が生み出されているのかについて、具体的な事例を交えて解説いただきました。後半では「二又さんの未来戦略」について報告がありました。

「A型」と「B型」の違い、正しく言えますか?
よく耳にする「就労継続支援A型」と「B型」。二又氏の解説でその違いが明確になりました。 大きな違いは「障害の重さ」ではなく、「雇用契約の有無」です。
- A型事業所:雇用契約を結びます。最低賃金が保証され、社会保険にも加入します。一般就労に近い形態です。
- B型事業所:雇用契約は結びません。成果報酬的な「工賃」が支払われます(全国平均で月額約2万円)。体調に合わせて週1回や短時間の通所も可能です。
最近の傾向として、最低賃金の上昇に伴い、経営が難しくなったA型事業所が減り、B型へ転換するケースが増えているという「業界の裏事情」も伺うことができました。
徹底したタスクの細分化
報告の中で最も経営者としてのヒントを感じたのが、レガードで行われている「作業の分解(マッチング)」の話です。 「一般社団法人レガード」では、ニラや水菜の調整作業、野菜の収穫、さらには「ばあちゃん新聞」の発送作業などを行っていますが、これらを工程ごとに細かく分解しています。
例えば、ニラの調整作業一つとっても:
- 運ぶ人(足腰が丈夫な人)
- 枯葉を取る人(座って手先を使うのが得意な人)
- 計量する人(数字に強く正確な人)
- 箱詰め・確認する人
といった具合に、利用者の障害特性に合わせてチームプレーで仕事を進めています。 片手が不自由な方でも、「運ぶことはできないが、枯葉を取ることはできる」といったように、適材適所を見つけることで戦力化しているのです。
農作業だけじゃない事務作業のアウトソーシングという可能性
また、二又氏はご自身の本業である「金華園」の事務作業を、レガードの利用者に委託しているそうです。 身体的な障害で野菜のカット作業などは難しくても、PCスキルが高い利用者さんがいらっしゃいます。その方に
- 名刺のデザイン作成
- 配送の伝票入力・発行
- 請求書の作成
これらを任せることで、二又氏自身が行っていた事務作業がなくなり、経営に集中できるようになったとのこと。 「障害者雇用=単純作業」と思い込みがちですが、適性を見極めれば、高度な事務作業やIT業務も任せられるという実例は、多くの企業にとって協業のチャンスがあると感じさせられました。は、「企業変革支援プログラム」などを活用し、自身の会社の課題(顧客満足度の把握不足、安定収入の確保、付加価値の向上)を明確化した結果です。
中小企業経営者だからできる「二刀流」のシナジー
もう一つ面白かったのが、二又さんが経営するもう一つの会社「金華園(苗木・植木生産販売)」との連携です。 同じ代表者が経営している強みを活かし、金華園の仕事をレガードの利用者に発注したり、逆に金華園のスタッフがレガードの「指導員」として活躍したりする構想です。
特に「金華園のスタッフが指導員になる」という点は経営的にもメリットがあります。金華園の人件費の一部を福祉事業(レガード)側からパート代として支払うことで、会社全体の人件費コントロールが可能になるという「裏話」も。 福祉事業を単体で見ず、既存事業と組み合わせることで経営の安定化を図る視点は、多くの経営者にとって参考になる事例でした。
質疑応答:「就職して60歳まで」なんて思わなくていい
質疑応答の時間は、現場のリアルな苦悩と温かさが入り混じる、非常に濃い時間でした。
「3年で帰ってきてもいい」という温かさ
そして、私が一番ハッとしたのが、最後の「一般就労」に対する考え方です。 私たちはつい、「就職したら定年まで勤め上げるのが幸せ」と考えがちです。しかし、二又さんはこう言いました。
「就職しても2年でも3年でも一般就労できて、それで十分です。ちょっと疲れたらまたB型(事業所)に戻ってきて。一度勝負してほしい」
障害のある方にとって、30歳で就職して60歳まで働き続けるのはハードルが高い現実があります。だからこそ、「ダメなら戻っておいで」というセーフティネットがあることで、彼らは社会への一歩を踏み出せるのです。
企業側も「一生面倒を見なければ」と気負うのではなく、「1〜2年でも経験を積ませてあげる」くらいの感覚で受け入れる。それが、真の障害者雇用への近道なのかもしれません。
まとめ:地域と繋がることの本質
前半の報告を聞いて感じたのは、「仕事を細分化し、強みに合わせて渡す」というマネジメントの基本は、一般企業も福祉事業所も変わらないということです。 自社の中にある業務を「この作業なら切り出せるかも?」「この入力業務なら頼めるかも?」という視点で見直すことが、地域貢献にも繋がり、自社の生産性向上にも繋がる第一歩なのだと学びました。
今回の二又さんの報告を通じて、「仕事を通じて誰かと繋がること」「居場所があること」がいかに人の生きる力になるかを再確認しました。 B型事業所は、単なる作業所ではなく、社会と個人を繋ぐ「結び目」のような場所なんですね。
「ウチの会社でも何か切り出せる仕事はないか?」「少しの間でも受け入れられないか?」 そんな風に、自社の経営と地域社会の関わりを見つめ直す、素晴らしい機会となりました。二又さん、貴重なご報告ありがとうございました!
最後に、りょうちく支部からあなた自身へ質問です。
「自社の『弱み』や地域の『困りごと』を、他者との連携で『資源』に変えていますか?」
