経営指針書『我社の場合』 プティット姪浜ルーム 所長 島 佐代子 氏

指針書ができあがってからは、真っ暗闇の夜空に北斗七星が現れたような、そんな希望のある感じでした。

 

 今回から私・岡本が、同友会の皆様がどういう思いで経営指針書を作成されたのか、企業訪問して皆さんにお伝えしたいと思います。第1回目は、姪浜で保育所を運営されているプティット姪浜ルーム所長の島佐代子さんにお話をお聴きしました。島さんは平成24年にあすなろ塾にゲスト参加し、すごくよかったのでその日のうちに同友会入会を決められました。そして、2ヶ月後の8月には2泊3日の経営指針作成セミナーに参加されました。

 

指針書インタビュー 島さん 会社外観

【指針書を作成したきっかけ】

島さん:平成12年(2000年)、西区姪浜地区に新しく開設した24時間年中無休保育所の所長として、10名のスタッフと共に毎日一生懸命頑張っていました。9年目、前オーナーから事業継承する運びとなり、慣れない経営をすることになりました。仕事はその後も順調にいったものの、私自身が保育と経営者としての仕事と兼務しながらで、毎日大変疲れていました。こんなこと、いつまで続けられるのだろうか、この先どうなるのだろうかと、不安でたまりませんでした。ですが、スタッフのみんなにそんなことを口にすれば、みんなも不安になるだろうと思い、誰にも言えないまま、ただ悶々とそんな不安感と一人戦っていました。

そんな時期の私にグッドタイミングで、前オーナーからあすなろ塾へのお誘い。どんなところか、わからないまま、言われるままに参加。そして、開講一番の林田経営労働委員長の話を聞いて目から鱗が落ちました。

『ここにいるみなさんは経営の迷子の状態だと思います。自分が今どこにいるのかわからない。どこにいけばいいのかわからない、どうやっていけばいいのかわからない、のではありませんか』

(まさに、今の私はそうだ!)

『でも、この状況から脱却することはできます。必ず、そこへ行く、という意思さえあれば。』

(えー!本当にそんなことができるのだろうか。)

そのときの力強い言葉を聞いて、私はとても救われた思いがしました。これまで、経営や数字の勉強はしたことはありませんでした。すぐに同友会に入って、とにかくこれから真面目に経営について学ぼうと、強く決心しました。そして、いろいろな会社の社長さん達と逢って新鮮でしたし、皆さんから元気を頂き、私はだんだんイキイキしてきました。

2泊3日の経営指針作成セミナーでは指針書を作り上げる事ができませんでしたが、その後、7期生との勉強会に参加する事で作る事ができました。その勉強会とは、7期生(虹色会)のメンバーと毎月かかさず開いている勉強会のことです。2ヶ月に一会社、持ち回り。プレで会社訪問し、指針書を見たり会社見学をしたりします。その一ヶ月後の本番の発表会は山内先生(山内経営コンサルティング会社)のところをお借りしています。指針書の内容について、正直な、忌憚の無い意見を活発に交わし合い、自社の経営指針書をブラッシュアップできる場になっています。(山内先生は我々のメンターのような存在で、温かく見守っていただきながら、毎回大変貴重なご意見を頂き、より深い学びになっています。)

【指針書作成での課題】

そういうわけで、経営指針書については随分他の会社のものを見せていただきました。しかし、なにぶん男性社長が多く、表現が男性らしく言葉が力強く固い印象で、真似しようにも、取ってつけたようなものになるし、どうしたら自分達らしい指針書が作れるかが課題でした。「自分達らしい」「保育所らしい」「スタッフにとっても違和感が無い」ということに悩みました。どんなものか探し求めました。そして、一年近くかかってやっと作成した指針書には、固い言葉はなく、従業員と選んだイラストや写真を多用してやさしい感じにしました。そうすることで、すんなり自分達のものとなるように、自分達のものと思ってもらえるように取り組みました。

指針書インタビュー 島さん 指針書画像

 

【指針書を作って変わった事】

指針書を作って、大きく変わりました。それまでの私の心象風景は、真っ暗闇の夜の海の中で、スタッフと一緒にオールをただひたすらこいで航海しているような、そんなとても疲れる不安な気持ちでした。しかし、指針書ができあがってからは、真っ暗闇の夜空に北斗七星が現れたような、そんな希望のある感じでした。北斗七星をめがけて、そこに行けばいいんだと感じました。

これまで、この不安や疲れた状態はいつまで続くのだろうと思っていましたが、指針書ができてからは、目標が明らかになりました。元気になりました。私が元気になったので、従業員みんなも元気になったはずです。

認可外保育所という職場は労働環境が必ずしも良いとは言えず、少しでも普通の会社のような良い職場環境にしたいと思い、まずは「従業員満足度を高めます」と指針書に最初に書いて約束しました。就業規則を作りました。週休2日制も導入し、疲れすぎない環境を築きました。働き甲斐のあるように、勤務体制を変えました。そして、私自身プレーヤーであったので、保育の現場の仕事から一歩退き、経営と管理の仕事を重点的にするようにしました。「社長の仕事は従業員が働きやすいシステム作り」だということに、やっと気づいたのです。

これらは、同友会に入らなかったら、わからなかったことでした。

【経営指針を発表して】

指針書をつくって、みんなの前で発表したら、絶対に実行しなければならない、という気になります。決めた事は半年でやりとげました。着々と実行していくうちに、「やっと経営者としての自分を自覚できた」と思いました。なにせ突然なった「たなぼたオーナー」でしたので、まず自分自自身が「社長」として認めることがとても難しかった。経営指針書を作って、計画を実行して形にしてゆくことで、スタッフも周りも、心から認めてくれるようになったのではと思います。成し遂げたこと、決めたことを絶対にやり抜いたこと、これは私の大きな自信になりました。

 

経営理念

「私たちはお母さまの子育て応援隊となって『女性が安心して子どもを産み育てる社会』作りの為に貢献します」

 

【指針書を作成していない方へのメッセージ】

2泊3日の経営指針作成セミナーの受講をお勧めします。指針書で自分が変わります。自分の考えが明確になります。作らないと経営は行き当たりばったりになってしまう。(作らなくても会社は)まわることはまわると思いますが、よい経営とは・・・・言えないかもしれません。

最初は従業員向けに作ったつもりでしたが、結局自分に向けてのものでもありました。指針書は自分との約束・決意表明です。有言実行しなくてはなりません。

7期生と一緒に学び合いができてよかったです。難しいかなと思っていましたが、仲間がいたからできました。2泊3日から始まって、行ったばかりにせずに、学び続けることが大切と思います。7期生との勉強会は2年目になりつつある今も継続中。山内先生曰く「続けてる事が勉強になっている。」7期生とお互い言い合う事は「みんな成長したよね~。なんか社長になったよね~」。そう言って笑い合うくらい、その当時の自分たちと今は変わっていると思います。

 

【編集後記】

 私の役割は、普通のインタビューのお仕事かなと思っていました。しかし、やってみると、今聞いたお話を早く皆さんに伝えたいという意識にかわりました。社員のために作るのだと位置づけてしまう指針書作り、実は社員のためより、経営者向けのことだったと気づかされます。

 指針書作成→発表(宣言)→成し遂げる

社員は経営者の後ろ姿を見ているとも言われます。言ったことを成し遂げる姿を見てもらう事が、自分のためでもあるし、社員のためでもあると思います。(岡本健一)

 

あすなろ塾・経営指針作成セミナー

2014年9月19日