~「財務分析では現れない強み」と、自主・民主・連帯の実践~

会員の皆様、こんにちは。2025年も残すところあとわずかとなりました。 師走の候、社業に同友会活動にとご多忙な日々をお過ごしのことと存じます。
私たち経営者は、どうしても「決算書」や「税金」といった数字の世界(財務情報)に目を奪われがちです 。しかし、AIの進化や消費行動の変容が激しい現代において、過去の数字だけで未来を語ることは年々難しくなっています 。
そこで今、改めて注目すべきなのが「非財務情報(見えない資産)」だとおもっています。
そして、この重要性を紐解くと、私たち同友会が掲げる「三つの目的(よい会社・よい経営者・よい経営環境)」および「自主・民主・連帯」の精神との深い結びつきが見えてきます。
- 「民主」的な経営が、現場の強さを生む
例えば近年、大手スーパーが苦戦する一方で、地域密着型の中小スーパーが躍進している事例が多々見られます。この中小が大手に勝つような強さの源泉は、何でしょうか。
私は、これらの企業の共通点として現場への「権限移譲」にあると考えています。
本部がすべてを決めるのではなく、現場の担当者が、
- 売場担当者が自ら仕入れを決める
- 地域の行事を知る担当者が売場を変える
- 店長が地域のお客様と顔を見て会話する
といった、“現場が意思決定する”分散型組織 が作られています。
本部や社長の上意下達ではなく「現場が意思決定を尊重する分散型組織」が、現場の素早い判断と利益を生み出す効果性のある戦術、臨機応変な対応につながっていると考えています。
そしてこれは、まさに同友会が掲げる「民主」的な経営の実践の結果であるなと思っています。
社員一人ひとりを信頼し、パートナーとして尊重する。「現場社員の意見を尊重する」、「失敗を恐れず挑戦する空気」や「現場で考え、判断する習慣」といった企業風土は、一朝一夕には真似できない強力な非財務資産となります 。またこれは、社員の「自主」性を最大限に引き出す土台でもあります 。
まさに同友会の良い企業づくりにおける自主的、民主的な経営の実践の先にあるのではないかと追っています。
- 「連帯」が生み出す、模倣困難な競争優位
また、好調な地域企業の背景には必ず「地域密着力」という武器があります 。 単なる安さではなく、「地元の食材が多い」「好みを分かってくれている」といった顧客との関係性は、決算書には載らない心理的価値です 。
地域を深く理解し、顧客や地域社会と共に歩む姿勢。これは同友会の精神である「連帯」そのものであり、「よい経営環境」を自ら作り出す行為でもあります。この「関係性の資産」こそが、他社が簡単に模倣できない最大の競争優位となるのです 。
- 「よい会社」とは、原因(非財務)が強い会社である
私が最近気が付いたことで、ある概念というものがあります。
それは「財務は結果、非財務は原因」であるということです 。
- エンゲージメントが高い(原因)→ 生産性が上がる(結果)
- 顧客理解が深い(原因)→ 付加価値の高い商品が売れる(結果)
私たちが目指す「よい会社」とは、単に一時的な利益が出ている会社ではありません。
その利益を生み出し続けるための「原因(組織風土、信頼、人材の自立性)」が強靭な会社のことではないでしょうか 。
ドラッカーが「文化は戦略に勝る」と言ったように、強い文化(非財務資産)を持つ会社は、環境変化という逆風があっても、内部から適応する力が湧き上がり、長期的な利益を生み出します 。
- 経営指針に「見えない資産」の目標を
年末のこの時期、来期の計画(経営指針)を立てる方も多いと思います 。 その際、売上や利益といった「数字の目標」だけでなく、その数字を作るための「見えない資産(非財務情報)」についても問い直してみてはいかがでしょうか 。
- 「わが社が誇れる、数字に表れない強さは何か?」
- 「社員のやる気や、顧客との絆をどう高めるか?」
この問いに向き合うことこそが自立型企業づくりにつながり、「よい経営者」としての成長、「良い会社」づくりになり、企業の持続的成長に不可欠な視点です 。
来る2026年も、理念を軸にした「人を生かす経営」で、地域になくてはならない企業を共に目指してまいりましょう。