お客様から、地域から、未来から求められるために
〜コツコツと、そしてちょっぴり背伸びして〜

有限会社アサノ自動車 専務取締役 浅野 明裕 氏(久留米支部)
奇をてらうことなく、足をしっかり地につけて歩み続ける㈲アサノ自動車。
同友会での学びを活かしていきます。
いとこで経営
今回の自立型企業の取材は久留米市の㈲アサノ自動車を訪れました。専務取締役の浅野明裕さんが明るく迎えてくださいました。
もともと明裕さんの伯父(父親の兄・現会長)が自動車の修理業に携わっており、父親(現・副会長)と共に起業させました。昭和45年のことです。
自動車の修理・鈑金塗装、車検・整備、新車・中古車販売、保険など自動車に関する業務をワン・ストップで行っています。
明裕さんは久留米で生まれます。関東で大学の機械工学に進み、その後自動車関連企業に就職しました。3年ほど働いて25歳で久留米に戻ってきました。
明裕さんは、小学校1年の時からラグビーを始め、28歳まで現役でプレーし、今では地域の子どもたちを指導しています。
同社は世代交代を図り、会長の次男・佑志さんが2代目社長、副会長の長男・明裕さんが専務、すなわちいとこ同士で経営しています。
同友会との出会い
入社して5年ほど経ったころ、売上げの半分以上を占めていたお客様から取引を中断されたことがありました。すぐに会社の存続にかかわるような案件ではありませんでしたが、経営を見つめ直す必要を感じていました。
その頃、知人から同友会の誘いを受けました。会長からも「外で勉強してこい」の一言で入会するのでした。しかし初めは居場所がなく、なじめなかったと言います。
支部例会で井上桂樹さん(井上熱帯園㈱・東支部)の報告を聞き、経営指針書作成・実践の重要性に気づきました。すぐさま『あすなろ塾』『経営指針作成セミナー』を受講しました。
「初めて会社のことについてじっくりと考える時間が持てました」と振り返ります。そして次のような理念を策定しました。
【経営理念】
『求められるために』
【行動理念】
1.「お客様の喜び」を追求し、お客様から求められる人財を目指します。
2.企業活動を通して地域社会に貢献し、地域から求められる企業を目指します。
3.未来へ繋がるために行動し、未来から求められる存在を目指します。
「求められるため」に日々行動することで„自分の未来“を豊かなものにする。
同友会の学び
戦略として、取引先を分散させるようにしました。またディーラーからの仕事は下請けとなってしまうので、個人・法人との直接取引の比率を上げていきました。「これも同友会の学びです」。
データを構築してお客様のコンタクトを絶えないようにしています。
「この地域で、この業種がインスタグラムやLINEの活用は珍しいと思います」と語ります。「車検を通すために整備をしなければならない」という言い方をするお客様がいますが、本来自動車を安全に運行させるためには、通常からきちんと整備しているのが基本です。『車検のため』では、目的と手段が入れ替わっています。SNSを有効活用し、可視化して正しく情報発信したいと浅野さんは考えています。
№2だから見えること
自分の意志で戻ってきたのですが、その時に「№1(=社長)にはなれないよ」と言われていました。それは了承していました。(そして社長には4人の息子さんがいます)。現在、会社の方針は社長と専務が話し合って決めています。「言うべきことははっきりと言います」と浅野さんは語ります。
工場内においてはスタッフのスキルアップに余念がありません。「一から十まで教えてしまうと、覚えなくなりますので自分で考え作業させています。工場内であれば失敗しても取り返しがつくので、試行錯誤を経て技術も向上していきます。責任感も生まれてくるでしょう」。現場にいる№2だからこそ見えることもあります。こういった指導法はラグビーにも通じるものがあるかもしれません。
「ウチの特徴は、よくも悪くもスタッフが若いことです。ベテランからの技術継承が少ないです。車検の場合は整備士の資格が必要ですが、鈑金塗装(修理)は資格や経験がなくてもおおよその作業ができます。しかし、本人のやる気を高めていくために資格取得も奨めています」。
また保険会社のアドバイスで、昨年ベトナムへ行き面談して実習生として採用しました。
「よき参謀として、この業界では珍しい100年企業になればいいなと考えています」。
未来から求められるために
いま、自動車業界は大きな転換期にあります。カーボンニュートラルや自動運転などが挙げられます。
日本政府は2020年にカーボンニュートラル宣言をしました。2035年にガソリン車の新車販売が終了します(ハイブリッド車はガソリン車には含まれません)。そして2050年までにガソリン車利用の廃止を目指しています。「徐々に電気自動車や他のエネルギーにシフトしていくと思いますが、その他の構造は大きく変化がないのではと思います。鈑金塗装(修理)の需要はまだあると見ています」。
自動運転にしても、東京五輪の経済的な背景と目されましたが、法的(道路交通法など)環境整備が追いついていません。ただ、高速道路走行などでは事例も見られるようにはなってきました。自動ブレーキに関してはかなり普及しており、その結果事故が減り鈑金塗装修理が減ってきています。
内製化の比率をさらに上げていくことにも尽力しています。その一例として、自動ブレーキに対応するための設備を導入しました。
また顧客管理のデータ化を進め深耕を図る考えです。
「コツコツと、そしてちょっぴり背伸びしてがんばりたいと思います」。


久留米支部の未来
浅野さんは次期支部長予定者です。「栗原朋宏支部長(㈱ベストプランニング)が増強の仕組みづくりをしてくださっているので、私はそれを忠実に踏襲していきたいと思います。また県とも連携し『知る会』を有効に開催して、まず増強に取り組んでいきたいです」と意気込みを語ります。
ワン・ストップでお客様に対応
取材の最後に浅野さんの考える自立型企業についてお伺いしました。「読んで字のごとく『自ら立つ』企業でしょうか。下請けにならず直接個人・法人のお客様とお付き合いできるようにすること。そのためにはとにかくお客様とのファーストコンタクトを大切にして接触頻度を上げていきます。事故時の対応などは重要です。自分のモノを他人に預けることは少なからず不安が伴います。お客様の不安を少しでも軽減させ、ウチに安心して預けていただけるように努力を欠かしません。そして外注に頼る比率を下げ内製化に努めること。スタッフの多能工化を進め、ワン・ストップでの対応をし、お客様も安心していただけるよう様々なことにチャレンジしていきます」。
現在、浅野さん自身が工場に入って作業や指導にあたることが多いので、若いスタッフを確実に育てて、いずれはプレーヤーからマネージャーにシフトを図りたいと考えています。「これも同友会での学びです」と締めていただきました。
取材協力ありがとうございました。
<有限会社アサノ自動車>
創業:1971年1月
住所:久留米市国分町1620-1
電話:0942-21-3220
従業員数:3名
事業概要:自動車に関することならなんでも!!ご相談下さい。
HP-URL:https://asano-auto.jp
取材/広報部
文章/菅原弘(東支部)
写真/富谷正弘(玄海支部)