拠所(よりどころ)創造企業

~しあわせのカタチは十人十色~

株式会社福祉人(ふくしにん) 代表取締役
伊藤 孝司氏 【ひびき支部】

お客様がしあわせになるためにどんなことができるかを考えようと、伊藤孝司さんはスタッフに呼びかけます。

会社概要
「社名が示すように介護福祉と、さらに配食の仕事をしています」と㈱福祉人(ふくしにん)の伊藤孝司さんは会社の説明をしてくれました。福祉介護事業はケアプランサービス、ヘルパーサービス、住宅型有料老人ホーム、デイサービス、介護保険外サービス、障害福祉サービス、コンサルティングなどがあります。配食事業は、『ありがた屋』の屋号でお弁当の配達をしており、現在16の事業を10か所で展開しています。スタッフは131名に及びます。

福祉事業に目覚める
伊藤さんは、1971年静岡県で生まれます。岐阜県の全寮制の高校を経て大阪の大学に進みます。アルバイトをしていた先の人材派遣の会社に就職しました。佐賀県に転勤した際に転職を図ります。IT企業で総務人事を務めましたが、その会社が岡垣町に不動産を所有しており、その物件のリノベーションを担当することになりました。そこで差別化を図り、介護に関わる施設にしました。2013年のことです。プロデューサーの立場だったのですが、現場に出てみると、お客様が喜んでいるのを目のあたりにして、福祉事業にやりがいを実感しました。

そのタイミングで㈱福祉人を立ち上げたばかりの須藤司さん(のおがた支部)と出会い、「一緒にやらないか」と声を掛けられました。須藤さんの考えに共感を覚え合流するのでした。

2代目社長に就任
㈱福祉人は2012年6月に設立しました。この会社の事業は3つの柱からなります。
① 共に歩み(福祉サービス事業)
② 共に創り(現在は主に配食事業、将来的には健康事業)
③ 共に活きる(活き活きとした暮らしづくり)

事業を展開していき、①と②で実績を上げていった頃、当時社長の須藤さんが③の事業で『米づくり』というキーワードに出会い、社長を伊藤さんに譲り、自分は『農業人』を立ち上げるのでした(詳細は月刊同友2024年12月号をご覧ください)。

基本理念は須藤さんが策定したものを踏襲しました。

基本理念
 私達は『拠所(よりどころ)創造企業』です。

運営方針
 福祉は人、仕事はこころ、それぞれみんな十人十色、今までの歳月を大切に、これからの生活をご支援させていただきます。それを可能にする場所、仲間がここにはあります。

行動指針
 その人と、その人に関わる「全ての人が幸福」となれるよう、その実現のために本気で考え、しない事は何もありません。

『拠所』とは自分の居場所です。その人らしく生きる場所です。そして福祉は人です。社名の由来でもあります。福祉の業界では人材不足もあり、ロボットが導入されるようになりました。

「便利になり負担も減りましたが、すべてロボットでお客様は本当にしあわせでしょうか。仕事にこころがこもっていなければただの作業です。しあわせには基準はなく人それぞれの価値観があると考えています」。

どうやったら『しあわせ』
伊藤さんはこんな例を話してくれました。
車椅子生活をしているお花が好きなおばあさんがいます。山の頂上にきれいなお花があり何とか見せてあげたい。頂上へは2つの道があります。1つは急な坂ですが道はなめらかです。もう一つは勾配が少なめですがデコボコ道です。あなたはどうやっておばあさんにお花を見せますか。スタッフで話しているうちに、車椅子を何人かで担いでいこう、頂上の花を取ってきて植えかえようなどの方法が出てきます。できないことはやれませんが、考えてやれることはやっていこうよということをスタッフとともに確認したのでした。「しあわせのカタチは十人十色です。基準はありません。どうしたらその人に合うかを考えていきます」。

同友会に入会
社長になったのを機に経営を学ぶために同友会に入会しました。
「須藤は自分の思いをカタチにしようとして会社を立ち上げました。創業者ですね。私は後継者として、会社を存続させようと考えています。同友会ではいろいろなケースで経営する人がいてとても参考になります。自分だったらどうするかという疑似体験もできます」と語ります。

入会時から『役職』を依頼されてきました。「自分には向いていないと思うこともあるんですが、人から見たら私にそのタレント(才能・資質)があると見えるんですね、せっかくチャンスをいただいたのですから、自分が納得するまでやってみることにしています」。現在は副支部長を務めています。

理念の浸透
同友会では理念の浸透の重要性を改めて実感しています。
年に1回、スタッフを全員集めての研修会を開催しています。昨年は『会社の未来』というテーマでみんなと考えました。
各事業所の運営は幹部の自主性に任せ、伊藤さんは調整役に徹するというスタンスをとっています。基本的には各事業所を回り、報告や相談を受けています。「ウチではデイサービスが5か所ありますが、それぞれカラーが違うんですよ」と伊藤さんは話します。

今後の展開
2021年の介護法改正では、地域住民の複雑化複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的支援体制の構築の支援となっています。
介護事業は多角化しないと収益は減っていくと考えています。
ビジョンとして売上目標を掲げていましたが、コロナ禍で影響を受けました。自社の強みを活かした事業の柱をいくつか構築しなければならないと考えています。
お客様が施設に通うことを考え、商圏が重なるように拠点を展開し半径20㌔程度になっています。団塊の世代が90歳まで生きると想定し戦略を練ります。前述の事業の柱③共に活きる(活き活きとした暮らしづくり)では、余暇を活かした暮らしを考えています。「スポーツジムを展開するにしてもフランチャイズでは面白くないですね。自社のスパイスを加えたいです」。現在情報収集しています。
「課題は人手不足です。介護は経験が必要と考えている人が多いです。経験がなくてもできる仕事もあります。今その方策を考えています」と伊藤さんは言います。

レールすら社員が敷く
取材の最後に伊藤さんが考える自立型企業についてお伺いしました。
「経営者がレールを敷いて社員がその上を走っていくというイメージがありますよね。でも私は、こう思います。経営者が目的地(方針)を示す。そして社員はそこへ行くためのレールを自分たちで考えて敷いていき、その上を走っていく。そんな会社じゃないでしょうか」。
同社が目指しているのは、お客様が『拠所』となってくれる会社です。「社員が「この会社で働いてよかった」と社員の『拠所』となるのが、いまの私の幸せです」と笑顔で締めていただきました。

取材協力ありがとうございます。
株式会社福祉人

創  業      2012年6月
住  所      遠賀郡遠賀町木守1546-1
電  話      093-291-3717
従業員数      131名
事業概要      介護サービス業、及び飲食事業を遠賀郡、鞍手郡、及び直方市にて展開しています。http://fukushinin.co.jp

取材/広報部 
文章/菅原 弘(東支部)
写真/富谷正弘(玄海支部)

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