経営者の心と頭を軽くする

〜ワンストップでお悩み解決〜

輝翔法律事務所 所長 林直輝氏(福博支部)
同友会での経験を活かして『経営理念』をつくりました。いま経営理念が社内で果たす役割を再認識するのでした。
『ライト顧問』で間口を広げる

今回の自立型企業の取材先は、福岡裁判所の近くに事務所を構える輝翔法律事務所です。所長で弁護士・通知税理士の林直輝さんが笑顔で出迎えてくれました。
「当事務所は、弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士・財務コンサルタントが揃っており、お客様のご相談をワンストップで対応しているのが特徴です」と話します。
一般に法律相談というのは庶民にとって、敷居(相談料)が高いというイメージがぬぐえません。「相談に乗ったからといって私たちの知識が減るわけでもありません。しかし無料だと気を使って話ができない。そこで月3,000円というお手頃料金の『ライト顧問』という顧問契約をつくりました。同友会のみなさんと話しているうちにできた商品です」(詳しくはHPまで※)。

弁護士に合格
林さんは1980年に福岡市で生まれます。「父はとても怖い人でした」。そんな父親が「弁護士はいいぞ」とよく口にしていました。中学生になる頃から、そんな父親がうらやむ弁護士を目指すようになり、周囲にも公言していました。一方で福岡高校ではラグビー、九州大学ではアメリカンフットボールに励むスポーツマンでもあります。ロースクールに進んで28歳で弁護士の試験に合格しました。

波乱の独立
3年後の独立を目指し、とある法律事務所で『修行』をするのでした。あらゆる業務を修得したいと思う林さんは、昼夜を惜しまず仕事に明け暮れました。体調を崩しながらも必死に仕事をこなす一方で、雇い主の先生は眼の前で漫画を読んで笑っています。さすがにスポーツマンの林さんも疲弊し、情緒不安定にもなってきました。『ドクターストップ』(診断書の提出)にも意を介さない先生に、(本人曰く)「ゴリゴリのケンカをして」事務所を飛び出しました。
「さぁ、明日からの仕事がなくなった」。林さんは急遽、不動産を訪ねすぐに借りられる事務所を探しました。弁護士は弁護士会に所属することと事務所を持つことが必須となっています。福岡市大手門のマンションの一角を借り、ホームセンターで購入したじゅうたんを敷きこたつを置いて、パソコンとFAXを設置します。2週間足らずの2012年4月1日に創業したのでした。

同友会に入会
独立当時、顧問先で知り合いになった秋吉博文さん((税)九州パートナーズ/福博支部)が声をかけてきました。
「林君も経営者の仲間入りだね、いい勉強会があるよ」と同友会を勧められ即入会しました。「弁護士になることが目的で、燃え尽き症候群になっていたのかもしれません。同友会で様々な経営者との出会いがあり、とても刺激的で楽しく思いました。そしてお話ししていくうちに、経営者の悩みを聞くようになりました。自分が持っている知識が、経営者の課題を解決して喜んでくださる。それが自分の喜びにもなっていくことを実感しました」。
その後『あすなろ塾』『経営指針作成セミナー』を受講しました。策定した経営理念は次の通りです。
『経営者の心と頭を軽くする』
法律のプロとしての知識で、経営者のお悩みの解決にお役に立ちたいという思いから生まれました。

ワンストップ体制へ
創立して2年7カ月して、事務所移転を考えていました。高校の友人であった弁護士に「一緒にやらないか」と持ち掛けました。事務員としてお願いしている方は社労士の資格をもっていました。様々なエキスパートが集まってきたことで顧客満足度が高まることを実感していました。これがワンストップへの入り口です。
林さんは、いわゆる寄り集まりの集団ではなく、有機的な組織にしたいと考えました。そこで林さんが所長となり、他のスタッフは社員という形をとりました。現在では14名体制です(内10名が女性)。
行動指針には『自分の幸せを第一に考える』と謳っています。修行時代の先生が『反面教師』になっているのかも知れません。具体的には、就業時間にかなりの自由度をもたせています。また「自分のやりたくないこと(ちなみに林さんは『作業』)は、それを苦手ではない人に任せよう。みんながやりたくないことはみんなで話し合おう」と決めています。組織の中で、「それくらいは察してくださいよ」というのはタブーにして、意見は口に出して言おうという企業風土ができています。これはラグビーやアメフトなどのチームスポーツで培った精神でしょう。

福岡青年部連絡会の代表に
同友会に入り1年が過ぎたころに、中同協から各県で青年部連絡会をつくろうというガイドラインが示されました。支部として青年支部(満40歳まで)があるのは福岡同友会だけです。青年部連絡会は、いわゆるヨコのつながりを強化するものです。福博支部の担当としてメンバーになりました。初代の都地隆幸さん(都地畳店/同友会に入り1年が過ぎたころに、中同協から各県で青年部連絡会をつくろうというガイドラインが示されました。支部として青年支部(満40歳まで)があるのは福岡同友会だけです。青年部連絡会は、いわゆるヨコのつながりを強化するものです。福博支部の担当としてメンバーになりました。

涙の『福博ゴリンピック』中止
そして2018年福博支部長を拝命します。福博支部では2020年に東京五輪と林さんのニックネーム(ゴリラ)になぞらえて、その名も『福博ゴリンピック2020』(200名例会)を企画しました。目的は「支部を活性化すること」。3つの分科会と懇親会を4つのブロックが担当します。実行委員長の原田智香さん(三和浄水㈱)は、「とにかく盛り上がりました」と当時を振り返ります。
そこに襲い掛かったのはコロナ禍でした。会員仲間の協力でチケットは完売、プレ例会も滞りなく済み、準備万端でした。直前の2020年2月の理事会で、林さんの必死の説得もかなわず『中止』の判断が下されました。「泣きながら理事会を飛び出しました」と振り返ります。

経営理念にまつわる疑問
林さんは、経営理念に対してあるモヤモヤした感情がありました。とある同友会活動で中同協幹事長の中山英敬さん((株)ヒューマンライフ/田川支部)と一緒になる機会がありました。林さんはここぞとばかり尊敬する中山さんに経営理念にまつわる疑問を投げかけました。
「私は同友会活動を通して、『経営者の心と頭を軽くする』という経営理念をつくりました。私はこのために仕事をしたいと考えています。しかし、ウチでは士業に関わる社員でそれなりの人生観を持っています。社長の考え方を社員に押し付けるのは、社長のエゴではないかと思うんです」。そこでの中山さんの答えはこうでした。「林君にはオブラートに包まずにはっきり言おう。それは『理念の共有』が足りない。自分の感動や経営者として理念への熱い思いを社員と話し合い、もっと社員と共有しなければならない。真に共有がなされれば社員も同じ思いになり、それは押し付けでもエゴでもない」。林さんは、納得し腑に落ちた瞬間でした。

トップがいなくても回る仕組みがある会社
林さんの今後のビジョンについて聞きました。「当初は顧問先を増やすことを心掛けていました。『ライト顧問』も一定に成果を上げています。今後はクライアントと、より密度の高い関係を構築していきたいと考えています。そのことで様々な士業が活性化されていくことでしょう」。
取材の最後に林さんの考える自立型企業についてお伺いしました。「これは現状の課題でもあるのですが、私がオールラウンドでやっていて売上げや規模の拡大につながりました。いま私がいなくなったら会社が回っていくかどうか心配です。つまり、トップはいなくても、社員が自主的に働いていく仕組みがある会社、それが自立型企業じゃないかと思います。まず仕組みづくり、それが事業継承にも必要なことです」。企業名に個人名を入れないのは、企業が永続してほしいという願いが込められています。

取材協力ありがとうございました。

<輝翔法律事務所>
創業:2012年
住所:福岡市中央区六本松2-12-25ベルヴィ六本松3階
電話:092-711-0022
従業員数:14名
事業概要:士業のワンストップ(弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士)
HP-URL:https://kisho-law.jp/index.html

取材/広報部
文章/菅原弘(東支部)
写真/富谷正弘(玄海支部)

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