中小企業家同友会 中央支部の皆様、こんにちは!
先日開催されました第2回 中央支部 合同ブロック例会での熱気あふれる読書会が開催されました!
今月も指定書籍『はじめてのマーケティング』を手に、参加者の皆さんと深く学びを共有できた時間となりました。
特に盛り上がったのが、マーケティングの要とも言える「第7章:セグメンテーションとターゲティング」そして「第8章:ポジショニング」。これらの概念は、限られたリソースで最大の効果を出すために、私たち中小企業や個人事業主にとって、まさに「羅針盤」となるものです。今回の読書会で感じた、その学びの深さを、お伝えできればと思います。
はじめに:「 STP 」とは?
皆様は、ご自身の顧客が「誰」で、その顧客に「何を」提供し、競合の中で「どのように」差別化して選ばれるか、明確にお考えでしょうか?
マーケティングの世界では、この問いに答えるための非常に強力なフレームワークがあります。それが、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」 です。それぞれの頭文字をとって「STP」と呼ばれます。
このSTPは、マーケティング戦略の土台となる考え方であり、この3つの戦略は連動して行うべきものです。特に、ターゲットを明確にすることが、その後のポジショニングを成功させるための大前提となります。

第7章:セグメンテーションとターゲティング ― 顧客を「見つけ」「絞る」
1. セグメンテーションとは?:市場の多様性を読み解く
セグメンテーションとは、簡単に言うと、市場の中に混在する様々なニーズを持つお客様を、似たような特徴ごとに小さなグループ(セグメント)に細分化することです。これにより、お客様一人ひとりの満足度を高め、具体的なマーケティング戦略を打ちやすくなります。
読書会でも特に議論が白熱したのは、この「お客様視点」の分類でした。私たちは普段、「何が欲しいか」という具体的な要求ばかりに目が行きがちですが、その裏にある「なぜ欲しいのか」という根本的な理由まで掘り下げることが、いかに重要かという点を深く掘り下げました。
- ニーズ (Needs):お客様が「なぜその製品・サービスを買うのか」という根本的な理由。例えば、「健康になりたい」という漠然とした欲求です。この「なぜ」を理解することが、お客様の真の課題を見つける第一歩だと、改めて認識を共有しました。
- ウォンツ (Wants):お客様が「何を求めているのか」という具体的な要求。例えば、「手軽に始められるフィットネスジムが良い」という具体的な形になった欲求です。ニーズを汲み取った上で、お客様の具体的な「こうだったらいいのに」に応えるウォンツをどう形にするか、活発な意見交換がありました。
セグメンテーションを行う際には、ニーズとウォンツの両方を考慮し、市場を広すぎず狭すぎない「ちょうどいい範囲」で設定することが大切です。この二つの違いと、それが顧客理解にいかに役立つかという点が、今回の読書会の大きな収穫だったのではないでしょうか。
2. セグメンテーションの要件:良いセグメントってどんなの?
お客様をグループ分けしても、それがビジネスに繋がらなければ意味がありません。読書会では、効果的なセグメンテーションには以下の4つの条件を満たす必要がある、という点が議論されました。
- 測定可能性 (Measurability):そのグループの規模(人数や購買力)が測れること。
- 到達可能性 (Accessibility):そのグループのお客様に適切な方法でアプローチできること。例えば、特定の雑誌やSNSを通じてメッセージを届けられるか、ということです。
- 利益確保可能性 (Substantiality / Profitability):そのグループから十分な利益が得られるだけの規模があること。小さすぎるグループでは、ビジネスとして成り立たない可能性があります。
- 実行可能性 (Actionability):そのグループに対して具体的なマーケティング施策が実行できること。
この「良いセグメント」を見極める視点も、実際のビジネスに落とし込む上で欠かせない要素として、参加者の皆さんの間で深く共有されました。
3. ターゲティングとは?:狙うべきお客様を「絞る」
ターゲティングとは、細分化したセグメントの中から、自社のマーケティング活動をどのグループに集中するかを決めることです。ターゲットを明確にすることで、製品開発、宣伝方法、販売チャネルが驚くほど明確になります。
ただし、ターゲットを絞り込みすぎると、市場規模が小さくなるリスクもあります。このバランスを取るために、複数の似たようなセグメントをまとめて「セグメントの束」としてアプローチする方法も有効ですが、グループ間で矛盾が起きないよう注意が必要です。
4. ターゲティングのパターン:お客様にどうアプローチするか?
ターゲティングの戦略には、以下の5つのパターンがあります。
- 単一セグメント集中型 (Single-segment concentration):特定の1つのグループに集中する戦略です。リソースが限られている中小企業や個人事業主にとって、最も選びやすいアプローチと言えるでしょう。
- 製品専門化型 (Product specialization):特定の製品を、異なる複数のグループに提供する戦略。
- 市場専門化型 (Market specialization):特定のグループのお客様に対して、様々な製品を提供する戦略。
- 選択的専門化型 (Selective specialization):複数の異なるグループを選び、それぞれに異なる製品を提供する戦略。
- フルカバレッジ型 (Full market coverage):市場全体を狙う戦略で、「差別化型」と「非差別化型」の2種類があります。これは大企業向けのアプローチですが、将来的な成長を考える上で、概念を知っておくことは重要です。
第8章:ポジショニング ― 顧客の心に「選ばれる理由」を刻む
1. ポジショニングとは?:お客様の「心の中の特別な場所」
ポジショニングとは、ターゲット顧客の心の中に、自社の製品やサービスを他とは違う、独自の魅力的なコンセプトとしてしっかりと定着させる戦略です。これにより、競合を避けて有利な状況を作り出したり、「これならうちだ!」とお客様に選ばれたりする理由が生まれます。
これは単に「違い」を作るだけでなく、「独自の魅力的なコンセプト」から生まれるべきものです。
2. ポジショニングのタイプ:どう差別化するか?
ポジショニングは主に以下の2種類に分けられます。
- 相対的ポジショニング (Relative Positioning):「知覚マップ」(Perceptual Map)という図を使って、競合他社との位置関係を視覚化し、自社のブランドと他ブランドの差異を明確にする方法です。
- 比較的実施は容易ですが、競合も多いため、明確な差別化が難しい場合もあります。
- 自己準拠型ポジショニング (Self-Referential Positioning):知覚マップを超越した考え方で、自社ブランド独自の新しい評価軸を提示し、市場に新しいカテゴリを創り出すようなポジショニングです。
- 差別化が明確になり、競争が少ない「ブルーオーシャン戦略」とも関連します。
3. ポジショニング達成の方法:選ばれる存在になるために
ポジショニングを確立するためには、明確なコンセプトが必要です。そして、そのコンセプトは一言で表せるほどシンプルであることが非常に重要です。
4. ポジショニングの成功要素:シンプルな強みを持つ
ポジショニングを成功させるためには、明快かつ単純な一つのコンセプトに絞り込むことが必要です。そして、そのコンセプトに基づいたメッセージングを継続的かつ一貫して顧客の心に定着させる努力が求められます。
5. リポジショニング:現状を変える勇気
リポジショニングとは、既存のブランドイメージを新たなイメージに再設定することです。例えば、既存のポジショニングがうまくいっていない場合や、市場環境の変化に対応するために行われます。成功は困難を伴いますが、現在のポジショニングが本当に効果がなくなった場合に、積極的に取り組むべき戦略です。
STPの連携:すべては顧客のために
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの戦略は、それぞれが独立した概念ではなく、互いに密接に連携することで最大の効果を発揮します。
ステップ1:セグメンテーション(市場を細分化する)
まず、市場全体を漠然と捉えるのではなく、ニーズやウォンツ、行動パターンなどに基づいて、お客様を意味のあるグループ(セグメント)に分類します。
- 実践:
- 自社の製品・サービスが解決するお客様の「ニーズ」(なぜ買うか)と「ウォンツ」(何が欲しいか)を考えてみましょう。
- それらのニーズ・ウォンツを持つお客様を、地理、年齢、ライフスタイル、購買行動などの要素で分類してみます。
- 分けたグループが、売上につながる規模があるか、アプローチしやすいかなどを検討し、ビジネスとして成り立つセグメントかを確認します。
ステップ2:ターゲティング(狙いを定める)
次に、細分化したセグメントの中から、自社のリソースや強みに最も適した「ターゲットセグメント」を選定します。
- 実践:
- セグメンテーションで特定した各セグメントについて、自社の製品・サービスが最も高い価値を提供できるのはどこか、限られたリソースを最も効率的に投下できるのはどこかを検討します。
- 選定したターゲットに対して、どのように製品を提供し、コミュニケーションをとり、販売するかを具体的に計画します。
- 最初は「単一セグメント集中型」のように、特定の顧客層に絞って深く掘り下げるのがおすすめです。
ステップ3:ポジショニング(選ばれる理由を明確にする)
最後に、選定したターゲット顧客の心の中に、自社の製品やサービスが競合とは異なる「独自の魅力的なコンセプト」として定着するよう、戦略を構築します。
- 実践:
- ターゲット顧客に、自社の製品・サービスが「なぜ選ばれるべきか」を伝える、シンプルで明確なコンセプトを考えます。
- そのコンセプトを軸に、メッセージング(広告、ウェブサイト、SNSなど)を継続的に発信し、一貫したブランドイメージを構築しましょう。
- 競合他社と比較して、自社が「他とは違う、独自の魅力」を持っている点を強調してください。

まとめ:STPであなたのビジネスはもっと輝く!
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングは、それぞれが独立した概念ではなく、互いに密接に連携し合うことで最大の効果を発揮します。 これらを活用することで、皆様のビジネスは、限られた経営資源を最も効率的に使い、お客様に「選ばれる理由」を明確に伝えることができるようになります。
今回の合同ブロック例会での読書会を通じて、STPの重要性と、それがどれほど私たちのビジネスを前に進める力になるかを改めて実感できたのではないでしょうか。参加者の皆さんの熱心な眼差しが印象的でした。
まずは、皆様の現在の顧客や、これから獲得したい顧客をイメージしながら、今回皆で学んだSTPの考え方をぜひ実践してみてください。一歩踏み出すことが、未来の顧客獲得につながるはずです。この読書会での学びが、皆様のビジネスの新たな羅針盤となることを願っています。
最後に
次回の合同ブロック例会は8月28日の開催を予定しています。今回の読書会に参加された方はもちろん、残念ながらご参加いただけなかった方や、これから同友会への参加を検討されている方も、ぜひお気軽にお越しください!途中からのご参加も大歓迎です。新たな学びと交流の場を、皆さんと一緒に作っていきましょう!
- イベント名: 中央支部合同ブロック例会『 経営者読書会 』
- 開催日時: 2025年7月24日(木) 17:00~19:00
- 指定書籍: 『はじめてのマーケティング』
- 参加人数: 中央支部会員8名、他支部会員1名、ゲスト1名
- 次回開催予定: 2025年8月28日(木)
- お申し込み: edoyuより