
9月例会は、中央支部会員の株式会社権藤本店代表取締役 佐々木 善一 氏を報告者に「変化対応~生き残るために必要なこととは~」のテーマで開催されました。
2025年度の中央支部スローガンは、『会員企業100%黒字』~良い経営者・良い会社・良い経営環境の実現のために~です。
企業が黒字を出し続けるには、社会に貢献し続ける必要があります。そして、社会に貢献し続けるためには、社会に変化に応じて、自社も変化していくことが必要です。
では、自社を変化させるとは何なのか?変化の必要性を感じるきっかけは?変化するときに経営者の苦悩とは?それでも変えてはいけないものとは?
そのことを改めて考える例会でした。
株式会社権藤本店の創業は1868年、まさに明治維新の年です。当時の記録は、戦災などもあってあまり残っていないとのことでしたが、第二次世界大戦後の1947年に福岡天神の新天町に文具の販売店として出店しました。当時の社長は佐々木氏の祖父保積氏、その後、1975年に父保次氏が事業を承継しました。新天町は福岡有数の商店街ですし、もちろん紆余曲折はあったと思われますが、文具販売やオフィス家具販売などの事業を着実に続けられてきました。
佐々木氏は、そのような家業を横目に1999年に上京してミュージシャンの道を突き進んでいたそうですが、2008年に福岡に戻り、権藤本店に入社します。そこから、しばらくは、「のほほん」と暮らしていたそうですが、自社内でのお家騒動や同友会入会後に年長会員から全く勉強していないと叱責されたことをきっかけに(それを素直に受け止めて)、現状に危機感を覚え、まず、日経新聞を読み始めたそうです。
そうして世の中を知るようになると、それまでの家業であった文具販売やオフィス家具販売に限界を感じ、自社を変化させる必要を感じます。
そして、2017年に佐々木氏が事業を承継すると、さっそく、オフィス内装工事業を開始します。
実はその頃には新天町の店舗は事業の重荷になりつつあったそうですが、新天町に店舗があるという信用もあったことや長年の人間関係などから新天町の店舗は継続していました。
ところが、2020年、佐々木氏は、コロナ禍で人のいない新天町を見て、新天町の店舗を閉じることに決めました。しかし、それが正しいと頭ではわかり、閉じるための準備もしながら、佐々木氏は、気付いたら祖父のお墓にいるということが度々あったそうです。
「変化」の過程には、理屈だけで片付けることができないもの(その「もの」を私が表現するのも失礼な気すらします。)があり、それと正面から向き合い、本当に変化すべきなのか?捨てるべきものは何か?残すべきものは何か?そのことを苦しみながら自問自答を繰り返すことが必要であるように感じました。
さらに様々な勉強、情報収集をし、自社が世の中にどう貢献できるか、を考えた佐々木氏は、
権藤本店 = 文房具屋さん
から
権藤本店 = 内装施工屋さん(特に士業のオフィス構築に特化)
家具屋さん
AI屋さん
いろんな相談窓口(営業、組織運営プランナーなど)
というように事業を変化させていっています。
そのような経験を経た佐々木氏がおっしゃっていた、変化対応するうえで、
「間違えてはいけないこと」
「変えてはいけないこと」
を最後に記したいと思います。
「間違えてはいけないこと」=「自社のビジネスの定義」
佐々木氏のビジネスの定義は「オフィス構築」であり、全ての事業がオフィス構築につながることを強く意識し、そこから外した事業はしないようにしています。
「変えてはいけないこと」=「設立者の想いと共感」
権藤本店の原型を作った佐々木氏の祖父保積氏は「商売は人の役に立ってなんぼ」という想いをもっており、佐々木氏もこれに強く共感して経営を続けています。この設立者の想いと共感を持ち続けることは決して変えてはいけないと強く述べていました。
今も昔の世の中は大変な速度で変わり続けています。しかし、どんな時代の変化にも人は対応してきました。その変化の本質を見極めることができれば、これからの時代の変化にも対応し続けることができるのではないでしょうか。
今回の佐々木氏の報告は、その本質に迫るものであり、これからの経営者にとって重要な気付きを得るきっかけになったものと確信しています。
9月支部例会 座長 宮原 三郎