時代が変わるとき、経営も変わる

倒産件数の増加は、経営環境が確実に変化しているサインです。

皆さま、こんにちは

支部長の足立です。

最近、「企業倒産が増えている」というニュースを耳にする機会が多くなりました。帝国データバンクによると、2025年度上半期の倒産件数は5,146件と、12年ぶりの高水準だそうです。
この数字をどう受け止めるか――。私は、「経営環境の変化がいよいよ表面化してきた」と感じています。

原材料や人件費の上昇、ゼロゼロ融資の返済開始、人手不足。
こうした外部環境の変化は避けられません。しかし、だからこそ今こそが「経営の原点」に立ち返る時です。


売上より「粗利」を見る経営へ

同友会の学びの中でも、「数字を正しく見る」ことの重要性が繰り返し語られています。
経営の目的は売上を上げることではなく、粗利を確保して会社を持続可能にすることです。

どれだけ売っても利益が残らない取引を続けていないか。
顧客別・商品別の採算をしっかりと見直すことが、まず第一歩になります。

「長年の付き合いだから」「断るのが申し訳ないから」――そうした情の経営も大切です。
しかし、粗利がなければ社員を守ることも、地域への貢献もできません。
数字を冷静に見つめ、勇気をもって決断することが、真に“人を生かす経営”につながるのだと思います。


黒字倒産を防ぐ“資金の見える化”

いま増えているのは「黒字倒産」です。損益上は利益が出ているのに、現金が足りない。
これは経営者にとって最も怖い形です。

そこで、13週(約3か月)先までの資金繰り表を作りましょう。
入金・支払・返済・賞与・納税などを週単位で並べるだけで、「現金の尽きる日」が見えます。
もし返済負担が重いと感じたら、早めに金融機関に相談することです。
数字を整え、誠実に説明すれば、必ず力を貸してくれます。

そのためにも、戦略と数字をしっかり入れた経営計画と経営分析をして、備えておいたほうがよいと思います。 そして、定期的に銀行の担当者と面談して、自社の状況を理解してもらっておくことが、重要なことと考えます。
これは、経営指針書を実践する経営の延長でもあります。


「値上げ」は経営者の責任

値上げは怖い――。その気持ちは誰しも持っています。
しかし、原価や人件費が上がり続ける中で値上げを避け続けることは、会社の体力を削ることです。

大事なのは「伝え方」です。
「コスト転嫁」ではなく、「品質維持と供給継続のための見直し」として説明すること。
取引先と“共に生き残るための対話”を重ねること。

加えて、ハーマン・サイモン氏の研究にもあるように、インフレ期の値上げは「小幅で定期的」に行う方がよいとされています。
我慢を続けることが、逆にお客様の信頼を損ね、機会損失を生む場合もあります。
経営の判断は“先手・小刻み・説明責任”の3拍子が鍵です。

なお、ハーマン・サイモンのプライシングについては、中央支部の勉強会である読書会で解説を行います。


固定費と在庫を軽くする

家賃、リース、保守契約、サブスク――。
一度ゼロベースで見直してみましょう。
毎月は少額でも、年間にすると大きな支出になっていることがあります。

また、在庫は「眠っている現金」です。
デッドストックは思い切って現金化を。棚には動きのよい商品を並べ、倉庫には風通しを。
「倉庫の空気は現金を食べる」――そんな意識で臨みたいものです。


数字に“体温”を持たせる

経営数字は冷たいものではありません。
それは会社の“体温”であり、社員の努力の結晶です。

月次決算を早め、粗利や回転率を毎月チェックする。
顧客別・商品別の粗利表をもとに、「続ける・変える・やめる」を話し合う。
この小さな積み重ねが、経営の安定をもたらします。

数字を恐れず、数字と対話する経営を進めていきましょう。


おわりに

倒産件数の増加は、努力が報われない時代の象徴ではありません。
むしろ、「時代が変わるときに、経営の考え方も変える」チャンスです。

売上中心から粗利中心へ。
拡大よりも持続を重んじる経営へ。
焦らず、しかし先手を打つ。

同友会での学びを実践し、仲間とともに数字を見つめ、知恵を出し合いながら、
変化の時代を生き抜く「よい会社」を共に築いてまいりましょう

2025年11月4日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です