福岡同友会事務局より、有限会社一柳の取締役副社長、納富輝子会員の会社まで訪問しました。同社は創業以来100年を超える、いわゆる「100年企業」です。創業以来大事にされてきたこと、現在の事業、今後の100年ビジョンについてお聞きしました。

創業の想い「柳橋で一番になる!」
有限会社一柳の歴史は、創業者・納富平作氏が営んだ飴屋「納富光正堂」に始まります。戦後間もない1949年、二代目の納富誠氏が当時の歓楽街「柳橋で一番になる!」という想いから「菓舗一柳(いちりゅう)」と改名され、現在4代目の納富大輔氏で創業106年となり、洋菓子店「パティスリーイチリュウ」を福岡と佐賀で10店舗経営しています。
柳の木のように幹(経営理念)をしっかり保ち、枝葉は時代の風に「しなやかに対応できるように」との願いを込めています。また、「一柳」は「一流」に通じ、最高をめざす決意でもあります。
創業者の精神は「社員は家族、部下は子供、会社は家族みんなの幸せのためにあるべき」「素材を生かす菓子づくり、会社づくりは人財を活かすこと」。このDNAは今日まで受け継がれています。
どう危機を乗り越えてきたか?
(有)一柳は創業以来、戦後復興期、バブル崩壊、流通構造の変化、そしてパンデミック—。数知れない危機を経験してきました。現在は、原材料の高騰や最低賃金の上昇、人材不足など、時代ごとに様々な試練に直面してきました。
しかし、同社には「打つ手は無限」という揺るぎない信条(心訓)があります。この言葉を毎朝の朝礼で全員が唱和し、「必ず何とかなるものである」という確信のもと、冷静に現状分析し、本質的な課題に向き合ってきました。その結果、「大難を小難に、小難を無難に、そして無難を有難う(ありがとう)、に変える」—。このような思いで歩んできました。諦めずに挑み続ける姿勢こそが、当社が数々の危機を乗り越えてきた最大の原動力です。レジリエンス(復元力)の象徴である柳のようにしなやかさが大切で、折れない心ではなく、立ち直れる心も重要です。
変わらないために変わり続ける
同社のコアな強みは、職人集団としての技術力と、その個性を活かすモノづくりの仕組みです。グラン・パティシエをはじめとする全国・世界レベルの技術を持つ職人が在籍し、その技術を後進育成にも活かしています。
革新の歩みとしては、飴屋から和菓子屋、そして洋菓子店へと業態転換を重ね、食材や流通の変化に柔軟に対応し、「変わらないために変わり続ける」姿勢を貫いています。
素材は安心・安全・地産地消を重視し、旬の果物や高品質なチョコレートなど厳選食材を使用。さらに、SNSやイベント、会員制度など顧客戦略を進化させ、ケーキでの福岡県下シェアNo.1を目指しています。

現在の事業展開と“次の100年”に向けたビジョン
現在、福岡都市圏を中心に10店舗を展開。「幸福シーンのお手伝いを喜びとする」という理念のもと、地域に根ざした店づくりをしています。お客様との接点強化のために、SNS発信、会員制度、ケーキ教室、バースデーコンテストなど様々な顧客維持活動を実施。店舗ごとに特色を持たせながら、既存顧客売上比率を高めるリピーター戦略も推進中です。
(有)一柳のビジョンは、お客様にとって「なくてはならないケーキ屋」となることです。その実現のため「無農薬」「地産地消」を徹底し、自社農園での原料生産の拡大のほか、地域の農産物と組み合わせた独自の商品開発を進行中です。さらに、ブランドストーリーを象徴するロゴマークの変遷のもと、「幸福感」「あこがれ」「癒し」「安全性」「価値創造」「地域貢献」「人間力」「技術力」の8つの要素を軸に、次の「200年企業」に向けた歩みを続けます

<会社プロフィール>
社名:有限会社一柳
住所:福岡市中央区清川3-28-15
創業:1919年
事業内容:菓子製造・販売。洋菓子店パティスリーイチリュウの経営。
企業URL:https://ichiryu.jp/