平成28年度第1回バリアフリー勉強会報告

 平成28年度第1回バリアフリー勉強会が9月27日火曜日に福岡市教育委員会 発達教育センターとの共催で「バリアフリー、勉強と交流の夕べ」と題して開催されました。
 行政との共催の勉強会は初めての試みであり、しかも今回は発達教育センターからのアプローチでの企画で、同友会バリアフリー委員会の活動への期待を痛感しました。
 教育委員会の挨拶、同友会の樋口代表理事の挨拶で始まり、基調報告は副代表理事で「人を生かす経営」推進本部長の森茂博氏(和新工業㈱)が同友会が目指す経営者像について、自社の取り組みを例に挙げながら報告されました。
 続いて業種別に4分科会に分かれての事例報告とグループディスカッションです。

 

◆第一分科会 清掃関係  ㈱朝日ビルメンテナンス 太田 聡 氏

 社長の金子誠氏は永年中央支部会員だった方で創業66年のビルメンテの草分け企業。
  障害者雇用も永年定期的に取り組んでいます。

【河賀座長より報告】  第一分科会では、ビルメンテナンスを業とし、ビル清掃部門で障がい者雇用をされている㈱朝日ビルメンテナンスの太田聡氏にご報告をいただきました。現在、知的障がい者を7名雇用されており、内2名は10年以上の勤続年数です。同社では、特別支援学校から新卒者を採用する場合は、高等部3年生の間に夏休み・冬休み・卒業前の春休みに3回の研修を行います。そこで少しずつ成功体験を積み上げ、社会人になる自信と覚悟をつけてもらうのが目的です。  「誰よりも大変なのは、同じ現場で働く社員」ということで、最初の1年は全チーム員にインセンティブをつけるそうです。現場毎でしっかり育てていることが、この長い勤続につながるのでしょう。とは言え、全てが成功してきた訳ではありません。それでもジョブコーチや本人の両親など外部との連携を通じて「まずは障がい者雇用にトライしてみて!」という熱のこもったお話に、分科会参加者から質問が相次ぎ、時間が足りない程盛り上がりました。

 

◆第二分科会 ものづくり関係   和新工業㈱ 森 茂博 氏

 基調報告に続き、自社の取り組みを報告されました。

【黒木座長より報告】  第二分科会の事例報告者は基調講演をされた森茂博氏であった。事例報告では代表取締役をされている和新工業㈱のパンフレットを回覧し、取扱い商品のイメージをまず掴んだ。ただ、高速道路や山道に隣接している斜面に設置するコンクリート製の階段であったり、巨大な鋼製の型枠であったりと、特殊な物も掲載されていた。これなら、健常者や障がい者に関係なく、手順の明確化や意思疎通の容易化が厳しく求められる職場だと感じた。現在、障がい者を実習生として受け入れている下地として、その前に外国人を雇用した経緯があるからだろうとの事。 また、パソコン等の事務系の危険でない部署に彼らは適しているのではないか、とのこと。  その後の2グループに分かれての意見交換では、そもそも人には皆個性があるのだから、障がいの有無ではなく、どんな業務が適しているのかと言う観点で雇用する。雇用される側にも雇用主を選ぶ権利がある。雇用した障がい者同士の相性が心配、と言った健常者同士でも当然ある悩みが紹介された。  よくよく冷静に考えると、これを書いている私も欠陥だらけの人間。結局、皆補い合って生きている、と言うことに落ち着くのか。

 

◆第三分科会 サービス関係  ㈲ラピュタファーム 杉本 利雄 氏

 農園・果樹園を運営し、取れた作物でレストランを経営。辺鄙な立地を生かし?北九州&福  岡から車で1時間と謳い集客に成功。
 障害者雇用に取り組み5年。無くてはならない人材に成長している報告でした。

【三輪座長より報告】  ラピュタファームは福岡県田川郡川崎町にあり、農園からレストランまで行っている会社です。取れた物をレストランで提供し、年間6万人が訪れる6次産業の見本になっています。  会社の場所や職種により人手不足は経営の悩みでもあったが、その中で障がい者の方を6年前より雇っています。初めは何も出来なかったが、仕事を細分化、リストアップする事により今では、いなくてはならない存在へと成長させることが出来ました。教えたら伸びていく、出来る事を増やしていく。これは障がい者であってもなくても社員教育と同じではないかと感じました。外国の農場とは違う事は「障がい者をなぜ活かせないのか?」ということが杉本さんの頭の中であったので、農園のバリアフリー化や人と人、人と地域のコーディネートなどに力を入れ、今に至ります。  今後の展開としては、名逢館高校と連携して、引きこもりや発達障害の就労困難者にどう仕事をさせていくか?を考えている最中です。また、農業と福祉のあり方なども視野に入れて、新たな地域づくりに取り組んでいます。報告を聴いてグループ討論をしましたが、まだまだ目先のことにとらわれていて、まさに人を生かす経営の大切さなどを学んだ分科会になりました。

 

◆第四分科会 サービス関係  介護施設テポーレ千早 大塚 雄一 氏

 昨年の合同技能発表会での特別支援学校生徒の真剣な取り組みに感動。
経営者を説得し、まずは実習生受入れに取り組んだことを報告されました。

【齋藤座長より報告】    第4分科会の報告者は医療法人福香会おくだクリニックの住宅型有料老人ホーム・テポーレ千早で施設長代理を務めている大塚雄一氏でした。  大塚氏は初め、バリアフリー委員会で障害者雇用の現状や制度などを学び、特別支援学校やA型、B型事業所の存在を知ったそうです。そして直ぐに特別支援学校合同技能発表会に参加、そこで実習生の受け入れを進められました。  大塚氏は介護ビジネスをされていますが、この業界の最大の問題は人手不足。テポーレ千早も例外ではなく、障害者雇用を視野に入れた実習生の受け入れでした。やってみたいと思ったら即実行、大塚氏のモットーです。受け入れての感想は、特別支援学校や発達教育センターの対応は細かく、いろいろとサポートしていただけたそうです。  今回の受け入れで障害者雇用での介護スタッフとしての課題も見え、すぐには困難だと感じたが受け入れは行っていきたいと感じているそうです。  グループワークでは学校関係者、異業種の方など参加され、中には障害者雇用について初めて聴いた方などもいましたが、皆さん熱心に語られていました。  中には大塚氏と同業者で既に障害者雇用を行い、複数の事業所に1人ずつの雇用を目標に進められている方もおり、そちらのお話にも関心が高まりました。障がい者が企業で働ける視野が広がった事を感じられた第4分科会でした。

 

2016年12月20日